承&怒

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 缶詰を出しきった段ボール箱に、汚れても良いタオルを放り込む。ここで、悪意が芽生えた。  そして、適当な紙にマジックで書いてやった。乱暴な字で「捨てた人へ告ぐ。この中の子達は、実験材料にします」と。  それから、貼り付け用のガムテープも用意。何をやっているんだと思われそうだが、捨てやがった奴に「良かった、拾って貰えた」と思わせたくはない。  汚い段ボール箱の辺りに戻り、周囲に人気が無いことを確認。ガムテープで「捨てやがった奴へのメッセージ」を貼り付ける。  そして、段ボール箱を開けて毛玉達を確保。直ぐに持参した段ボール箱へ入れ、タオルに包む。後は、さっさと帰る。既に仔猫の体は冷え切っていた。  僅かだが動くには動いたから、生きてはいる。だが、それも時間の問題だろう。小さな生き物は、とにかく弱い。  ミルクは後にして、お米をレンジで温めて簡易カイロ。ネット情報は何だかんだで役に立つ。後は、このきったない奴らをどうするかだ。  流石に、段ボール箱で病院へ連れて行く訳にもいくまい。だが、今からキャリーバッグを売っている店に行くのか……そもそも、仔猫用ミルクを買うのに、スーパーへ戻るのも嫌だ。  キャリーバッグの代用品……ある程度足場が安定していて、空気の入れ替えが出来れば良いか。そんな都合良く、キャリーバッグを持つ人の近くに毛玉が捨てられることも無かろう。  そうと決まれば、開放的なカバンに仔猫達を入れて、最寄りの病院へ。事情を説明して、飼う気はあるのか確認されつつ診療へ。仔猫達の状態は良くない様だ。  乾いてはいるが、へその緒が付いたまま。これを人工保育で育てるのは難しい。中でも小さい個体達は、生き残る保障は殆ど無い。  決断を迫られた。だが、拾ってしまった以上は、見捨てられない。例え、生き延びさせられなくとも、温かな最期を迎えさせたい。それがエゴだろうと構わない。
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