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ボクの家の裏には、大きな山がある。
夜になると、そこからカーンカーンという音が時々、聞こえてくることがあった。
弟はそれが怖いと言っては、二段ベッドの上で眠るボクの布団にもぐりこんでいた。
ボクはお兄ちゃんだから、弟を守らなくちゃいけない。だからボクは、泣く弟の頭を撫でながら約束したのだ。
「大丈夫だよ。お兄ちゃんが何とかするから」
そう言ってあげると、弟は安心して眠ることができるのだ。それは僕にしか出来ないことだった。
もちろん、ボクだって怖い。真っ暗な闇の中から聞こえてくる不気味な音。夜しか聞こえてこないのも不思議の一つだった。
確認したくても、お母さんとお父さんから絶対にあの山には行ってはいけないよと言われていた。
あの山に入ったら、二度と帰ってこられなくなる。だから、子供だけで行ってはいけないのだと、何度も聞かされていた。
ボクはお母さんに夜に鳴る音の話をしたけれど、困った顔をするだけで教えてくれない。お父さんも同じだった。
だからボクは、近所のお兄さんに聞くことにした。
そのお兄さんは大学生で、ボクがまだ赤ちゃんの時から遊んでくれていた優しくて、頭の良い人だ。
ボクはお兄さんを見つけると、さっそく近づいた。
「あの山から夜になると、変な音が聞こえるんだけど知ってる?」
ボクの問いかけに、お兄さんはボクのお父さんとお母さんと同じ、困った顔をした。
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