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「あっ、危ない!」 星一は咄嗟に夢奈を守ろうとして動いたが、それを私は手で制する。 (彼女に助けは必要ない) そういうメッセージを込めて、首を横に振る。 夢奈が人差し指を老人に向ける。 すると素早い動きのその老人は、夢奈に接近するなり、すうっと魂が抜けたようにその場に倒れてしまった。 「わっ、あっという間だね、夢ちゃん」 私はパチパチと拍手を送る。星一と正弥はただ呆気に取られて、何も言えない様子だった。 「ね、夢ちゃんはすごいでしょ?」 私はまるでわが子を自慢するような誇らしげな気持ちになっていた。 「すごいなんてもんじゃないよ、これは…まるで魔法じゃないか」 夢奈の《《力》については私から口で聞かされるだけでは半信半疑だった彼も、さすがにそれを目の当たりにして驚きが隠せないらしい。 「でしょ?ふふふ」 そんなやり取りをしている私たちに一切構うことなく、夢奈は黙々と倒れこんだ老人の体を確認していた。 「その人、どうなったの?もう元に戻せたの?」 「いや、それは無理みたい。これ今寝かせてるだけだけど、この人がかかってる催眠状態は解けてない。だから、起きたらまた元通りになると思う」 「どうやったら元に戻せるの?」 「たぶん、これをしてる大本を叩かないと、この人はどうにもならないっぽいね」 夢奈はうーんと唸ってまた咳をする。 「っていうか夢ちゃん、咳ばっかりしてるけど、大丈夫?」 よく見ると夢奈は少し顔色も悪い。 「大丈夫だって、このぐらい」 「そう?しんどくなったら、無理しちゃダメだよ」 夢奈は分かったと適当に返事をして、とにかく先に進もうよと言う。 だが、その直後、ぎゃあああああという悲鳴が轟いた。 声の主は正弥だ。 慌てて確認すると、正弥の前方の藪から数人の赤い目をした老人、そして老婆が群れを成してこちらに向かって来ていたのだ。 どうやら、先ほどの老人の奇声が仲間を呼び集めてしまったらしい。 「正弥くん!下がって!」 夢奈は大きく手を広げて正弥を背後に回らせた。
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