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総勢五名の老人たちは夢奈に指一本触れることなくあっという間に倒されたが、どうやら、まだこれで終わりではないようだった。 藪の四方八方から、ガサガサ、ガサガサという地面を擦るような足音が聞こえている。どうやらその数は相当数いるらしい。 「これは厄介なことになったねぇ…」 夢奈はゴホゴホと痰の絡んだ咳をまたひとつする。 「どうする?夢ちゃん。ここはひとまず逃げて、正弥君のお父さんのところに行く?」 「うん。でも、ある程度数は減らしておいた方が良いかも。歩いてる途中で不意打ちされたりしたら厄介だしね。とにかくみんなは、私から離れないで。どこから出てくるか分かんないし、一応木の棒くらいは持っておいて」 三人はコクリとそれに頷くしかなかった。 薄暗く、かなり近くに来るまでそのシルエットさえも見えない藪は、確かに危険だ。もし背を向けた時に忍び寄られたら、なすすべもないだろう。私は役に立つかは分からないが、夢奈の指示通りに近くに落ちていた棒切れを拾い上げ、握りしめる。その手は、わなわなと震えていた。 すると、 「大丈夫だ。背後は俺が守ってやるから」 と星一が私の背中にぴったりと背中を合わせてくれた。 「星一くん…」 屈強な彼の背中が触れているというだけで、私の緊張は大いに和らぎ、心強さを感じた。かつてこうして背中合わせで戦ったというアンボニーとメアリーリードの気持ちがとてもよく理解できたような気がした。正弥もそれに倣って夢奈の背中にぴったりとくっつく。 ガサガサ… ガサガサ… … しばらく聞こえていた足音が示し合わせたかのようにピタリと止む。静寂だけが藪の中に広がる。一気に、緊張感が高まる。 ぐわぁぁぁあああああん それから数秒後に奇声が聞こえたかと思うと、藪の中から一斉に老人たちが飛び出してきた。
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