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老人たちはとてもその年齢には見合わないような俊敏さで、次々と出没する。そのたびに夢奈が人差し指を向けて対処する。そんな繰り返しだった。
倒しても倒しても次から次へと老人たちが現れ、相手の勢いは一向に収まる気配がなかった。それどころか、どんどん相手の数が増えているようにさえ感じる。普通に考えれば、限界集落でもない限り小規模の村でも五百人から千人はいるものだ。それが一斉に襲い掛かってくるとなると、夢奈がいるとはいえ、これはかなり厄介な事態だろう。
だが、そんな形勢の不利をものともしないのが夢奈だった。奇声をあげながら近づいてきた相手でも、不意打ち的に表れた相手でも、あっという間に倒していってしまう。
「あの子、どこまで凄いんだよ」
もはや星一は呆れたような口調だった。
しばらくはそうして私達は特に何をすることもなく、ただ夢奈だけが忙しそうに老人たちの対処を行っていた。
ところが、ゴホゴホと夢奈が咳き込んで隙ができたその時、私の前方から一人の老人がいきなり飛び出して、襲い掛かってきた。
「ぎゃあああああああああああああああ!」
私は気が付けば、喚きながら老人をひたすら木の棒で叩いていた。だが老人には全く攻撃が効かなかったのか、私の肩をぐっと強烈な力で掴んできた。もうダメか、と思ったが、間一髪のところで夢奈が老人の動きを封じたので、なんとか助かった。
「ごめん、佳苗ちゃん」
その後もしばらく戦闘は続けられたが、いつまで立っても途絶えることなく現れる老人たちに、夢奈もさすがに疲労を覚えているようだった。
しばらくして一時的に老人の姿が見えなくなると、果敢に孤軍奮闘を続けていた夢奈が、大きく息を吐いてその場に座り込んでしまった。
「どうしたの、夢ちゃん」
私は慌てて夢奈のもとに駆け寄る。
「ちょっと私、限界かも。なんか寒気がするし、頭も痛いからうまく力も出せなくなってる。このまま戦っても、全員を守りきれないと思う」
夢奈はいつになく弱々しい声だった。
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