01

3/5
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
僕ね、三日前に終業式があって、学校が終わったの。 だから昨日、おじいちゃんの家に行くことになったの。お父さんと二人でね。 そこはS村っていうんだけどね、とっても緑がきれいでいいとこなんだ。大きな公園や神社もあるし、村の人もみんな優しいんだ。 でも、昨日は村に入った時から様子がおかしかったの。村じゅうでおじいさんやおばあさんたちが列を作って行進してたの。それで、車でやってきた僕らを見て、騒ぎながらこっちに近寄ってきたの。あっという間に車を囲まれて、窓やドアを引っかかれたり、叩かれたりしたんだ。 お父さんが呼びかけても、おじいさんたちは何も反応しない。それに、明らかに顔が変だったの。眼がギラギラと赤く光ってて、口を大きく開けてた。顔見知りのおじさんもその中にいたけど、僕らだとは気が付いてくれなかった。怖かったし、どうしていいかお父さんも分からないみたいだった。 だから、車の中でしばらく様子を見てたんんだけど、どんどんおじいさんたちが増えてきて、車の前のところにまで乗っかって前のガラスを割ろうとして、これはヤバいぞっておびえてた時だったの。 僕らの周りを取り囲んでたおじいさんたちがいきなり向きを変えて、道の向こう側から出てきた腰の曲がったおじいさんの方にいっせいに向かっていったんだ。それで取り囲まれたその人は、赤い目をしたおじいさんに首を噛まれて変な声を出したと思ったら、いきなりほかの人たちみたいに、赤い目に変わったの。 それを見てお父さんは血相を変えて車のアクセルを思いっきり踏んで、そこから逃げ出したの。でも、逃げた先にもあちこちに赤い目をしたおじいさんたちがいて、しつこく僕らを追いかけてきた。僕らはとりあえずおじいちゃんの家に向かって、どうなっているかを確認しに行ったの。 おじいちゃんの家は村の中心から少し離れたところにあったし、体格も良くて昔は空手もやってたぐらいだから大丈夫なんじゃないかとお父さんは言ってたけど、中に入った時にはもう手遅れだったの。おじいちゃんは普通の声で、『安心して、こっちにおいで』って呼びかけてきた。でも、目が赤くなってたから、怖くて近づけなかった。そしたら、おじいちゃんがいきなり変な声を上げて、こっちに凄い勢いで走ってきたの。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!