01

4/5

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
ヤバい、噛まれるって思ったんだけど、お父さんが僕をひょいっと抱きかかえて、そのまま車まで運んでくれたの。おじいちゃんはまだこっちに向かってきてたから、お父さんは慌ててアクセルを踏んで村から出ようとしたんだけど、最初に来た道で戻ろうとすると、またおじいさんたちに囲まれるかもしれないから、別の道に行って、村の外れの小屋みたいなところに一旦避難することにしたんだ。その小屋っていうのは、お父さんが子供のころによく秘密基地を作って遊んでたところらしくて、お父さん以外はほとんど知らない場所だから、ここにいればしばらくは安全だろうってことで、そこでしばらくいることにしたの。 何にもないところだったけど、確かに村のおじいさん達がやってきそうな気配はしなかった。お父さんはまず警察に連絡しようとしたんだけど、つながらなかった。村の中心にいけばつながるかもしれないけど、それは危険すぎるから無理だったの。 そこで、お父さんが言ったの。 『いいか正弥。よく聞くんだ。道は険しいけど、この小屋の右側から少し森を抜ければ、H町の方に出られるようになってるんだ。だから、正弥はそこから町に行ってU駅へ向かうんだ。そこで電車に乗って、隣町のJ市駅に行くんだ。J市駅前には有名な相談屋があるから、そこの人達に事情を説明して、ここまで連れてきてほしい。お父さんも一緒に行きたいところだが、お父さんはここに残って、色々とやらなきゃいけないことがある。だから正弥、できるか?この仕事』 僕は不安だった。でもやるしかないと思って、お父さんの言われた通りにして、ここまで来たの。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加