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「…で、どうして佳苗ちゃんの彼氏がついてきてるわけ?」 村へ通ずる裏道だという険しい藪の中を潜り抜けながら、夢奈は小声で尋ねた。私たちの前方には正弥少年、そして後方からは星一が来ている。 「私が村に行くことになったって話をしたら、私と子供二人だけじゃ危険すぎるからって来てくれたのよ」 星一には私と夢奈が開いている怪談相談所のことはすべて伝えてあるし、私と夢奈の関係性や過去にあった相談のことなども、洗いざらい話している。 「あのねぇ、そういう逞しい男なのはわかるけど、私を誰だと思ってんの?もしかして、私のこと舐めてる?いくら体格が良くても、こっちには足手まといにしかならないし、私も色々やりにくいんだけど」 夢奈はまたゴホゴホと咳をする。 「そんなことは分かってるわよ。でも、どうしてもって言うんだから仕方ないじゃない。それに、夢ちゃんの力のことはそれとなく伝えてあるから大丈夫だって」 「ほんとにぃ?はぁ、これだから彼氏持ちはヤだね。周りが見えてないんだから」 呆れるように夢奈はため息を吐いた。 「はいはい、ごめんごめん。次からは連れてこないようにするから」 口ではそうごまかしながらも、私は何度も後ろを振り返って、彼の姿を確認していた。自分から率先して最後尾につき私たちを守ろうとしてくれるその姿は、本当に頼もしい限りだ。 そんな会話を続けながら、藪をかぎ分けていたその時だった。 奇声 ガサっ、ガサガサガサ… 木々の向こう側から音がしている。土を踏み鳴らすような、明らかな人間の足音だ。 夢奈は足を止めて他の三人に手の動きだけでしゃがむように指示を出した。 ガサっ、ガサガサガサ… 茂みをかきわけるように、音が接近する。 そして一瞬、赤い光が見えたかと思うと、一人の人間が現れた。 顔つき、体格は完全に老人そのものだ。しかし、血走り、赤く輝いたその目はこの人物が平常の状態でないことを露骨に示していた。 老人は一瞬立ち止まったが、すぐさま奇声をあげながら、夢奈の方へと歩み寄っていった。
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