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機動隊の隊長が叫んだ。
「撤退! 負傷者を救助しつつ撤退!」
鳥に襲われた二人の隊員を周りの隊員たちが背負って、全員が警備車両めがけて走った。中に乗り込もうとしたが、鳥が先に車両の側へ到達し、その大きな頭部を一振りして車体を一撃した。
警備車両はぐらりと揺れて、そのまま横倒しになった。一か所に固まって狙撃銃の銃口を突き出す隊員たちの後ろで、けたたましく別の車のクラクションが鳴った。
暗い緑色の車体に、片側8輪ずつの車輪がある装甲車が牧場の敷地に乗り込んで来た。機動隊の隊長がつぶやいた。
「自衛隊か!」
装甲車の屋根に取り付けられている機関銃が火を吹いた。鳥はその巨体からは想像もつかない身軽さで、縦横無尽に走り回り、銃弾から逃げ回る。
装甲車が停止し、後部ドアから5人の戦闘服姿の陸上自衛隊員が飛び降りて来た。
自動小銃と軽機関銃で鳥に弾丸の雨を浴びせる。命中する度に鳥の赤茶色の羽毛が飛び散って舞い上がる。しかし、鳥の動きは止まることなく、再び方向を変え、自衛隊員たちに向かって走る。
自衛隊員の一人が対戦車用無反動砲を肩に担いで構えた。鳥が至近距離まで近づくのを待ち、胴体の真ん中に照準を合わせ、発射スイッチを引く。
オレンジ色の炎を後方に引きながら、先端の対戦車砲弾が飛び、鳥の腹に命中した。バンという爆発音とともに、大量の羽毛が宙に舞い、巨大な鳥は前のめりに地面に倒れた。
それでも1分近く、ぴくぴくと痙攣していた巨体の周りを銃を構えながら自衛隊員たちは取り囲んだ。
遂にその血まみれの巨体が動かなくなった事を確認すると、自衛隊の小隊長は装甲車の無線で上官に報告した。無線機の受話器を戻しながら小隊長はつぶやいた。
「これは渡研のお出ましだな」
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