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ー第1話 始の巻①ー
仁義礼智忠信考悌
室町時代。里見家の伏姫と八犬士たちが、様々な敵と戦う痛快娯楽の物語。
『里見八犬伝』
多くの人が知っている。
いや、知っている人だけ知っている有名な物語である。
しかし、ここに描かれる「里見八ニャン伝」は、山里外れた里見村を守る為、村長の娘と8人の猫があらゆる敵と戦うスペクタル・アドベンチャー・ストーリー!
・・・と言いたいところだが、どうやらそうではないらしい。
村長の娘・伏夜が、猫の守護神・大猫神様を助けたことによって作られた猫の剣士『八ニャン士』
八ニャン士は里見村と伏夜を守るという任務があるのだが、本当にできるであろうか?
「里見八ニャン伝」は・・・
そんな8人の猫たちの、ドタバタハチャメチャな物語である。
ーーーーーー
日本の山奥のある所に、小さな村の集落『東野郡』があった。
その東野郡には4つの村があり、その村にはそれぞれ多くの生き物が人間と共存していた。
猫が多い村の『里見村』
狸が多い村の『大和田村』
鳥が多い村の『由美村』
蛙が多い村の『中谷村』
特に里見村の猫と大和田村の狸の仲が悪いのは、今さらここで言うまでもない。
そして!
この山奥にある平和な東野郡で、4つの村を巻き込む大戦争が勃発した!
『東野郡大戦争(TOUNO WARS)』
ある日、里見村1番地に住んでいる村長の娘・伏夜の家に、1人の若い女性が訪ねてきた。
ピンポーン!
伏夜(以下:伏)「はーい、どなたですか?」
「伏ちゃーん! 私よー!」
玄関の前にいた女性とは、伏夜の高校時代の同級生である春花だった。
伏「ああ! 春ちゃーん! 久しぶり〜!」
伏夜と春花は久しぶりに会って、はしゃぎながら抱き合った。
春花(以下:春)「伏ちゃん、久しぶりだね! 何年ぶりかな〜?」
伏「高校卒業以来だから・・・もう何年ぶりだなんてわかんなくなっちゃったよ!」
伏・春「ハハハハ!」
伏夜は里見村に住んでいるが、春花は大和田村に住んでいた。
伏夜と春花は違う村だが、『東野郡女子高校』で同じクラスメートの親友だった。
お互いの村同士の仲は悪いが、この2人はその村の揉め事に関係なく仲が良かった。
春「ところで伏ちゃん! ちょっと話しがあるんだけど、今時間ある?」
伏「いいよ! 久しぶりに東野川の河原に行こうよ!」
こうして伏夜と春花は、里見村と大和田村の間に流れている『東野川』に出かけた。
一方、街から買い物帰りの里見村の村長・似星連太郎が、ニャン太郎を連れて歩いていた。
連太郎(以下:連)「おい、ニャン太郎! ダラダラしてないで早く歩きなさい!」
ニャン太郎(以下:太)「ダンナ様、ちょっと待って下さいよー! いくらなんでも多く買い物しすぎじゃないですかー?」
連「そんなことはない! これでも減らした方だ!」
太「減らした方? いくら安いからといって、トイレットペーパーを6袋と洗剤6本を買うことないでしょ!」
ちなみにこの連太郎は、なんでも多くストックしてしまう『ストック癖』があった。
連「いーや! もしトイレットペーパーや洗剤が無くなったら、お前はどうする! それを考えただけでも、ワシは夜も眠れんのだよ!」
太「(独り言)ったく、よく言うよ。 いつもうるさいくらいガーガー寝てるくせに・・・」
連「ワシは早く家に帰って、お母さんとイチャイチャしなくてはいかんのだ! だから、早く歩きなさい!」
太「へーい! 本当にダンナ様は奥様とイチャイチャが好きですね!」
するとニャン太郎と連太郎は、遠くで歩いている伏夜と春花の姿を見かけた。
太「あ、伏夜様だ! おや? となりの女の人は誰だろう?」
連「ん? ああ、あれは春ちゃんじゃないか! 伏夜の高校時代の友達だよ!」
太「伏夜様の高校時代の同級生? そうなんですね!」
連「春ちゃんはは確か・・・大和田村の女の子だったなぁ」
太「ええ! あの大和田村の人なんですかー?」
連「東野郡の村は皆んな小さくて高校が少ないから、村が違くても高校は一緒になることがある。何も里見村の人が皆んなが大和田村の人と争っているわけではないぞ!」
太「(独り言)だけど、僕は大和田村の狸からボコボコにされましたけどね・・・」
連「特に春ちゃんは『東野郡女子高校』で勉強や運動でも人気だったからなー! 東野郡ではかなり有名な女の子だよ!」
太「ああ、だから春花さんはあんなにかわいいんですね!」
連太郎は、ニャン太郎のその言葉に怒鳴った。
連「バカモーン! ワシの伏夜の方が1番かわいいわい! ニャン太郎、早く帰るぞ!」
太「へーい!」
ここは東野川の河原。
伏夜と春花は一緒に座りながら話しをしていた。
伏「ところで、話しって何? 春ちゃん!」
春「んとね? ウワサに聞いたんだけど、里見村には『八ニャン士』っていう猫の剣士がいるの?」
伏「八ニャン士? ま、まーいることはいるけど・・・」
春「ふーん。 その八ニャン士って・・・強いの?」
伏「うーん? 強いような、弱いような? 春ちゃん、何でそんなことを聞くの?」
春「あのね。 実は私も大和田村で、狸の剣士を結成しようと思っているの!」
伏「えー! 狸の剣士〜!」
伏夜は響きわたるくらい大声で叫んだ。
春「そう! その名も、『大和田八ポン士』!」
伏「大和田・・・八ポン士?」
春「そこで、八ニャン士がどんな剣士か見たいなぁって思ってね!」
伏「そ、そうなんだ。 でも、何で春ちゃんが狸の剣士を結成しなきゃいけないの?」
春「それはまぁ・・・今度話しするね! ねぇ伏ちゃん、お願い! 八ニャン士に会わせてくれない?」
伏「う、うん。 また今度紹介するね・・・」
伏夜は少し嫌がっていた。
春「本当に? ありがとう、伏ちゃん! じゃあ、また連絡するね!」
伏「わかった。 春ちゃん、今度は食事でもしながらゆっくり話しようよ!」
春「わかった! じゃあ、私は村に帰るね! バイバイ、伏ちゃん!」
伏「う、うん。 バイバイ、春ちゃん!」
こうして春花は、里見村と大和田村をつなぐ『東野橋』を渡って帰って行った。
春花は伏夜が見えなくなるまで、笑顔で手を振って帰っていった。
伏「大和田八ポン士か・・・。 なーんか嫌な予感がするなー」
伏夜はなんかモヤモヤな気持ちになりながら、自分の家へ帰って行った。
そしてゆっくりと東野橋を渡る春花は、怪しい目を光らせながら何か不気味な笑みを浮かべていた。
春「フッフッフ、里見八ニャン士ねぇ・・・。 これからが楽しみだよ!」
風で前髪が揺れると、春花の額には何かキラリと光る怪しい文字が浮かび上がっていた!
ーーーーー
はい!
こうして始まりました『里見八ニャン伝 東野郡大戦争』。
伏夜さんの同級生の春ちゃんは、一体何者なんでしょうか?
そして大和田八ポン士とは、はたしてどんな剣士なのでしょうか?
次回「始の巻②」をお送りします。
ついに大和田村の狸の剣士・八ポン士が登場!
お楽しみニャン!
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