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見渡す限りの砂漠。
太陽の熱が、ジリジリと体を灼いていく。
ここは死の砂漠だと恐れられている場所だ。
一度迷い込んだら、二度と生きて帰ることはできない。
自分を置き去りにしたまま、走り去って行った馬車が消えた方角を、恨めしそうに睨んでみる。
それでも、この絶望的な状況は変わらない。
腕も足も縛られたままで、立ち上がることさえできない。
大きくなったお腹を何とか庇うように、リルは砂の上に横たえていた。
時折、自分のお腹が力強く蹴られる。
それだけで、ホッとした。
お腹の中の赤ん坊は無事だ。
少し前までは、間違いなく幸せに満ちた日々の中にいたはずなのに。
どうして、どうして……。
こんなことになってしまったのか。
絶望的な状況の中で、リルは今までのことを走馬灯のように思い出す。
ーーそう、すべての始まりはあの日だった。
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