消えたプリン捜索事件

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 私は『推理小説をこよなく愛する会』というサークルのメンバー全員で旅行をすることになった。メンバーは自称影で光る脇役の伊藤(いとう)さんと近藤(こんどう)君、自称鋭い探偵の竹林(たけばやし)君、自称探偵よりも鋭い女の私を含めて四人で旅行した。  こういう機会は滅多にないということで、みんなでお金を出し合って、行きたかったホテルに泊まった。孤島に聳え立つ摩天楼と呼ばれるホテルに泊まることができてみんな喜んでいた。  事件が起こる数分前、私の部屋に全員が集まって、最近の推理小説の流行について話していた。伊藤さんが席を立ち、部屋を出て行ってしばらくして戻ってきて話に参加しようとした所で事件が起こった。  伊藤さんが悲しみながら搾り出すような声を出した。 「ああっ、なんてことに。事件が起きました!」  全員に緊張が走った。竹林君が鞄から探偵が使うような帽子と煙草を吸わないのに葉巻を取り出して、明らかに嬉しそうな表情を浮かべた。私は小道具まで用意して、こいつ大丈夫なんだろうかと不安感が芽生えた瞬間だった。  近藤君もポケットからスマホを取り出して、刑事ドラマで使われそうな音楽をみんなに聞こえるように流し始めた。軽快な音楽が部屋に響き渡った。 「私の出番だな。伊藤さん、どうされました?」 「大変なことになりました」 「落ち着いてください。何があったか正確に教えてください」 「プリンが……大切なプリンがなくなりました!」  竹林君が一瞬、声に詰まった。その光景を見ていた私も近藤君も俯いた。プリンの事件なんて聞いたことがない。
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