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「ミサさん、花は無事に取れたみたいですね。それじゃあ、リターンオーブで戻りましょうか。」
神殿の入り口で既に待っていたミサさんは「はい。」と頷いて、俺の前に来る。
「おい! ふざけるな。なんだあれは! おまえチートしてるだろ!!」
「そうだそうだ! チートキャラ使ってイキがってんじゃないわ!」
捲くし立てる二人の男に答える時間も勿体無いので、俺は大きく溜息をついてから、
「ソウルオーブって検索しろ。」
とだけ言葉を発して、服に備え付けられたカバンから『リターンオーブ』を取り出す。
《GMコノハナにより、あなたは審査室に移動します。》
「はい?」
俺は突然のシステムコールに耳と目を疑ったが、すぐに視界がブラックアウトし、光が戻った時には、既にどこかの部屋の中に立っていた。
なん…
「違反者容疑の通報によりあなたを拘束しました。これから質疑応答を始めたいと思います。」
目の前に立っている天使の羽をつけた金髪女性は、紛れもなくゲーム内の治安維持やイベント進行をするゲームマスター(GM)の姿だった。
「ジーエムか…はぁ…」
俺はこの状況を理解し、そして絶望的で圧倒的な虚無感に襲われていた。
そして徐々に怒りがこみ上げる。
「なんてことしてくれたんですか! ミサさんは?!」
俺は視界を部屋に向けると、隣にミサさんが居ることに気付いた。
もちろん、顔面蒼白だった。
そして気付く…植木鉢を持っていない事に。
「大事なクエストの途中だったんですよ! せっかくクリアしたのに…いや! それ以上に無実の彼女の邪魔をしたばかりか、楽しい時間まで奪うなんて! GMのやることじゃないでしょ!」
俺はミサさんを守るように一歩前に出て、目の前の金髪天使に怒鳴っていた。
「え?! 私は不正なプログラムでフィールドボスを討伐していると通報を受けまして…」
お前もかよ! と、言葉を吐きそうになったのを堪え、物凄く腹が立って、また怒鳴りそうになったのを何とか堪えた俺は、「ソウルオーブって知らないのですか?」と、言葉を返した。
「え? ソウルオーブですか? ちょっと待ってください。」
手を前に出してキーボードを叩く動作を始めたGM。
これは、システムメニューから特定の相手にメールを送る時などに現れるキーボードを打っている仕草。
それから返信メールでも見ているのだろうか。困惑した顔から、大きく頭を下げるゲームマスターの姿が目の前にあった。
「すみませんでしたっ!」
深々と頭を下げる金髪天使の背中の大きな羽が、自己主張が強いのか…なぜかイラっとする。
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