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女の子を泣かせてしまった。これは駄目だ。誰だってミスはするし、間違いもある。GMだからって例外じゃないし。
完全に俺の責任だ。
「でも゛、ぞの人のクエストがぁ~」
GMさんの、堪えきれなくなった涙がポロポロと床に落ちてガラスになって砕けていく。
物理的な痛いとか苦しいとかは無いこの世界だけど、感情による涙や顔色は作り込まれている。
コミニケーションを一番に考えているゲームだからこその拘りで、俺も気に入ってる事なんだけど…今はちょっと困った…
「それなら、上司に掛け合って、再度クエストを発生させるってのはどうですか? あのクエストは一度きりのクエストなのでアイテムを貰うと発生しなくなるから、無くなった時間は仕方がないですけど、クエストの達成感は得られるはずだから。ミサさんどうかな? 俺も手伝いますから。」
俺は、考えられる妥協案を提示して、ミサさんに意見を委ねた。
視線を向けると、困惑しているミサさん。
もう、この状況について行けないのは、その顔を見れば判ります。
でも、ここはミサさんに収めて貰うしか俺にはどうする事も出来ないのです。
ほんとお願いします。
俺は自然と、ミサさんに頭を下げていた。
「はい。もしそれが出来るのでしたら、私はそれが良いです。」
ミサさんの言葉に、俺の心の重みが消えていくのが判る。
「じゃあ゛、じょうじに゛、がけあ゛って゛みまず。」
鼻水声になっているGMに今は掛ける言葉が見つからない俺は「お願いします。」とだけ付け加えた。
まだ半分泣いている状態でメールを打つ仕草になった数秒後、俺達の前に大柄の男性GMが現れた。
もちろん、金髪天使の姿は変わらずに。
「リツさん、ミサさん。この度は大変ご迷惑を掛けました。私は『コノハナ』の上司をしています、『スサノ』と申します。」
不動の挨拶というのか、少し威圧的なオーラを俺は感じて、本能的にミサさんを隠すように立ち居地を変えていた。
「私の方でも、映像履歴を拝見させて貰いました。なので前面的にこちらの責任である事も存じています。ですので、リツさんとミサさんのご希望通りの、クエストの再受注からのやり直しを今すぐにでも出来ますがどうしましょうか? もちろん日時を指定してくれればその様に段取りを組ませて貰います。」
威圧的で事務的ではあるけど、丁寧かつ、的確な言葉に俺は頷いていた。
「それじゃあ、ミサさんの都合に合わせて下さい。俺は今からでも構いませんから。」
「じゃあ、私も今からでお願いします。」
そう言って頭を下げたミサさんにGMスサノが頭を下げる。
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