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それを繰り返し、ロレアさんの依頼クエスト『ラビトンの肉 12個の納入』の肉を集めたところで、俺は帰還石『テレポートオーブ』を使って村の転移ゲート前に戻る。
《テレポートオーブの使用により、『ファース』に帰還しました。》
『始まりの村 ファース』
プレイヤーが人族を選んだ場合に、最初に降り立つ場所。
村の北にある教会の隣、そこにある小さな神殿がその場所になっている。
俺は転移ゲートから東に向かって歩き、一軒の店に入る。
60代くらいの温和そうな笑顔でいつも出迎えてくれる男性が、薬剤師のドラルさん。
この世界の住人で、ゲーム用語でNPC(ノンプレイヤーキャラクター)と呼ばれる人達の一人だ。
「ドラルさん、モニの葉を持ってきました。」
俺は人差し指と親指を2度叩き合わせ、システムメニューを視界に呼び出し、クエスト欄から『ドラルからの依頼』をクリックする。
連動で開いた『インベントリ』の中にあるリストから『モニの葉』をクリックし、視界に現れた『取引』ボタンを押すと取引完了。
《300ルゼを入手しました。》
《ドラルからの依頼クエストを達成しました。》
「リツさん、毎度ありがとうございます。」
「いえ、それじゃあ、また来ます。」
軽く手を上げて別れの挨拶をする俺に、軽い会釈で笑顔を返すドラルさん。それはいつもの光景。
そして俺はいつも通りに次の店、ロレアさんの食品店に向かった。
「ロレアさん、ラビトンの肉を持ってきました。」
薬剤店と同じように、食品店のカウンターで俺は『取引』を完了する。
《300ルゼを入手しました。》
《ロレアからの依頼クエストを達成しました。》
「リツさん、今日もありがとうございます。」
ロレアさんは20代後半くらい年齢で、物腰も柔らかく、優しい笑顔をいつも見せている女性。
だけど、プレイヤーは直ぐに中央都市『アントン』に行くので認知度が低い。
もし認知度が高ければ『NPCランキング』にランクインしているはずだと、俺はずっと思っている。
「それと、ラビトンの霜降り肉が手に入りましたよ。あとはガルージャの肉と、今日は苺を持ってきました。」
俺はシステムメニューで『取引ボード』を取り出し、交換品をセットして『NPCロレア』に向かって提示する。
「いつもありがとうございます。」
ロレアさんからの『取引確定』の通知を貰ったので、俺も確定ボタンを押す。
《NPCロレアとの取引を完了しました。》
7年近く続けているこの取引での報酬は無い。
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