夢見る世界

2/13
前へ
/110ページ
次へ
 それを繰り返し、ロレアさんの依頼クエスト『ラビトンの肉 12個の納入』の肉を集めたところで、俺は帰還石『テレポートオーブ』を使って村の転移ゲート前に戻る。 《テレポートオーブの使用により、『ファース』に帰還しました。》 『始まりの村 ファース』  プレイヤーが人族を選んだ場合に、最初に降り立つ場所。  村の北にある教会の隣、そこにある小さな神殿がその場所になっている。  俺は転移ゲートから東に向かって歩き、一軒の店に入る。  60代くらいの温和そうな笑顔でいつも出迎えてくれる男性が、薬剤師のドラルさん。  この世界の住人で、ゲーム用語でNPC(ノンプレイヤーキャラクター)と呼ばれる人達の一人だ。 「ドラルさん、モニの葉を持ってきました。」  俺は人差し指と親指を2度叩き合わせ、システムメニューを視界に呼び出し、クエスト欄から『ドラルからの依頼』をクリックする。  連動で開いた『インベントリ』の中にあるリストから『モニの葉』をクリックし、視界に現れた『取引』ボタンを押すと取引完了。 《300ルゼを入手しました。》 《ドラルからの依頼クエストを達成しました。》 「リツさん、毎度ありがとうございます。」 「いえ、それじゃあ、また来ます。」  軽く手を上げて別れの挨拶をする俺に、軽い会釈で笑顔を返すドラルさん。それはいつもの光景。  そして俺はいつも通りに次の店、ロレアさんの食品店に向かった。 「ロレアさん、ラビトンの肉を持ってきました。」  薬剤店と同じように、食品店のカウンターで俺は『取引』を完了する。 《300ルゼを入手しました。》 《ロレアからの依頼クエストを達成しました。》 「リツさん、今日もありがとうございます。」  ロレアさんは20代後半くらい年齢で、物腰も柔らかく、優しい笑顔をいつも見せている女性。  だけど、プレイヤーは直ぐに中央都市『アントン』に行くので認知度が低い。  もし認知度が高ければ『NPCランキング』にランクインしているはずだと、俺はずっと思っている。 「それと、ラビトンの霜降り肉が手に入りましたよ。あとはガルージャの肉と、今日は苺を持ってきました。」  俺はシステムメニューで『取引ボード』を取り出し、交換品をセットして『NPCロレア』に向かって提示する。 「いつもありがとうございます。」  ロレアさんからの『取引確定』の通知を貰ったので、俺も確定ボタンを押す。 《NPCロレアとの取引を完了しました。》  7年近く続けているこの取引での報酬は無い。
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加