鍵クエスト

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 一階が店舗で、2階と3階が住居になっている建物が道沿いに並んでいる通りを歩く俺は、ガラス窓の展示スペースに剣や鎧などが飾られている目的の店に入る。 「こんにちわ。お邪魔します。」 「おおっ! リツ。奇跡的なベストタイミングだ!」  俺の入店に気付いたドワーフ族の男性が目を輝かせながら両手を挙げて喜んでいるのが、この店の店主で、製造スキルと生産スキルと採取スキルの非戦闘系3種を全て習得しているプレイヤーの『ワルド』さん。俺が『パラディン』で活動している時に知り合ってからの付き合いで、1年くらいになる。  いつもはメールでPT依頼を頼まれているけど、今日はメールを貰ってはいないから、丁度依頼メールを送るところに現れたってところかな。 「ワルドさん。狩りの誘いですか?」 「ああ、その通りだ。このパーティーの鍵クエの手伝いを頼まれたんだけどな、俺の知り合いの『パラディン』なら引き受けてくれるかもって話しててメールするところだったんだよ。5分待って返事なければ野良募集するところだったんだ。」  俺は店内に居た人達に視線を向けると、小さく頭を下げて挨拶をする4人のプレイヤーと目が合った。 『鍵クエスト』  フィールドでモンスターを倒していると稀に出る鍵型のアイテムで、60分以内に使用しないと消滅する。使用すると異次元の世界に行く扉が現れ、中に入るとフィールドボスモンスターの劣化版を倒すクエストが始まる。このクエスト自体も制限時間があり、30分後に消滅。30分以内でクリアー出来なければ失敗となって強制退去となり、異世界から戻される。  ボス討伐の報酬はクリスタルオーブのみで、ユニーク装備品の交換材料として使用。  これが、フィールドのユニークボスモンスターを待たずに、気軽に倒す事が出来るシステムで、クリスタルオーブを手に入れることが容易になるアイテム。 「依頼主が4人と言う事は、ワルドさんのインクリーですか?」 「そうだ。だからリツに頼もうかと思ってな。」  採取スキル20 生産スキル20 製造スキル20で得られる称号『インクリー』は、レアアイテム以下のドロップ量が2倍になる効果を発動する。  ユニークボスから出る箱は当然ユニーク品になるが、クリスタルオーブその物はレアアイテムになる。  なので、クリスタルオーブが直接ドロップする鍵クエストに『インクリー』持ちは重宝されるのだ。  しかしこの鍵クエストはパーティー人数が上限6人と決まっているので、ワルドさんが入るとなると戦闘職の構成がさらに厳しくなる。
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