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「あんた、防具はそれなのか?」
不機嫌な声で質問をしてきたのは、回復職のローザスト。
俺の今の装備はローブ系の黒い服。
フィールドボス『闇鳥ヴォルザ』のドロップ品だけど、当然サブタンクの役割を求める彼からの疑問は当然。
重装備の鎧に、片手メイスと盾が一般的な『パラディン』だけど俺は違う。
「ああ、私は格闘パラディンなのです。ってワルドさん説明してなかったのですか?」
「いや、説明する前に、おまえが来店したからな。これからだ。が、リツが説明するほうが早いだろ。」
また、いつどおりの豪快な笑みを俺に返すワルドさん。
「判りました。」
俺は依頼主達に説明する為、拳と足に装備する格闘武器を装備して見せる。
「称号『バーサーカー』付きの『アンタイオス』です。私はこれを装備しています。もちろんこのシリーズの重装備と盾の装備も持っていますが、それだと火力的に足りないかもしれません。」
「どうして足りない?」
不服そうな顔で俺を睨むのは、勿論ローザストと名乗った男。
「弓が戦力にならないからです。それと、テンプルの人は鈍器系、魔の人は聖属性の武器を持っている前提でも足りないかもしれないという話です。ありますか?」
「もちろん準備してあります。そして、ローザストの態度を許してください。」
「ほんと! お兄ちゃんはちょっと黙ってて!」
俺の質問に答えたのはジンロックさんだった。
そして、ローザストを諌めたのは魔法職のローズマリーさん。
兄妹だったのか。じゃあ、あの態度はなんなんだ?
「いえ、それはあまり気にしてないので問題ないですよ。ただ、純粋なサブタンクを求めているのでしたら、私は合わないと思うので野良募集して下さい。」
「おいおい、そうなんだけどな。バルガデス相手に、このメンバーで挑みたいって言ってるんだよ。初見だし、仲間外れは可愛そうだろ?」
ワルドさんが俺を引き止めて、仲介役を買って出る理由はこれか。
「初見ですか。それは外せないですね。経験を一緒に共有してこその仲間だし…失敗もまた楽しい思い出になりますしね。」
「まあ、そうなんだけどな。出来れば成功させてやりたいじゃないか。おまえなら成功率が上がるって俺は思っている。」
「そうですね。ネタばらし的な攻略方法を教えて、それが出来れば8割くらいの確立で勝てると思いますけど…出来れば、初見は盛大に全滅して欲しいって思いますけど。」
「おまえなぁ…」
「まあ、半分冗談です。鍵は貴重ですからね。」
俺はワルドさんから視線を依頼者達に戻して、改めて質問をした。
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