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「私の指示通りで動いて貰えるなら、倒せる見込みはあるのですが、自分達で討伐するっていう達成感が少なくなります。それでも良ければ私は手伝います。」
「少し、相談させてくれませんか。」
ジンロックさんがそう答えたので、俺は「はい。」と答えた。
「それじゃあ、ワルドさん。俺はやることをやっておきますね。」
「ああ、そうだったな。おまえがここに来た理由をまだ聞いて無かったな。」
俺は店のカウンターのところにある、システムボードの前に立つ。
《『ワルド店』のシステムボードにアクセスしました。》
この店は、生産系と製造系の職の人だけが購入出来る店舗型のマイホームで、ワルドさんの店。
ワルドさんは『アルケミスト』と『クリエイター』の二つの称号を持っているので、ポーション系のアイテム販売と、装備品の販売と製作依頼を店で行う事が出来る。
本人が店番をしなくても、店のシステムボードから取引出来るので、店持ちは生産職の憧れでもある。
ワルドさんなら大通りの良い場所に店を持つ事も出来るんじゃないかと以前に聞いてみたら、「常連客だけで十分だ。騒がしいのは嫌いだからな。」と、俺の疑問に答えてくれた。
俺は、『探検家の服』の製作依頼を選び、『女性』の項目をクリックする。
すると、自動的に俺のインベントリの中にあるアイテムがシステムボードのアイテムボックスに移動する。足りなければここで警告文が出るけど、全て揃っているので『確定』ボタンが表示される。
《探検家の服(女性)を製作しました。》
俺がインベントリの中に『探検家の服』が入っていることを確認していると、ワルドさんがカウンターのシステムボードを触っていると思ったら、ニヤけた顔を向けてきた。
「女物の服って、彼女でも出来たのか? そして一緒にゲーム始めたってところだな。」
「違いますよ。少し前から始めていた新規さんと知り合いになったから、プレゼントするんですよ。四月の新規登録キャンペーン品になってるから、疎外感を無くす為に。」
ワルドさんは腕を組んで考え込む仕草をしながら、まだ疑いの目を俺に向けている。
「そうなのか、つまらん。ならアクセも作ってやったらどうだ?」
「アクセは良いのが手に入ったから、それをもう渡してあります。」
「なるほど、相変わらず面倒見だけはいいな。それを現実で生かせば彼女ぐらいすぐに出来るものを。」
「現実で、俺を必要とする女性なんていないですよ。それに、手助け出来る事もないですし。」
「まあ、現実の女は強いからな。」
そう言ったワルドさんは、また豪快な声で笑っていた。
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