鍵クエスト

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「ブレス攻撃のモーションに入った時、目が緑じゃなくて、赤になっていたら範囲ブレスをしてきます。この範囲ブレスは、ほぼ避けようが無い攻撃なので、全員が一箇所に集まってバリアで対処します。なので、赤目になったら大声で叫んで下さい。そして、ローズマリーさんの場所に集合して下さい。ジンロックさんは『シャインバリア』を習得していますか?」 「はい。持ってます。」 「それじゃあ、バリアの役目もお願いします。ローザストさんと二人で上乗せすれば耐えられると思いますので、私とワルドさんの事は気にしないで、貴方達4人が集まった時点で使ってください。」 「あっ! はい。判りました。」 「私からの説明は以上です。」  横柄な態度を見せていたローザストだったけど、しっかりと聞く耳は持っているようで、俺の話を真面目に聞いている様子に、少しだけ俺は安心する。  それぞれの装備の確認とアイテムの確認を済ませ、彼らとPTを組んだ俺は、ジンロックさんが鍵を使って現れた扉に、一番最後に入った。  今回使用したのは『バルガデスの鍵』で、鍵によって異次元の世界は異なる。  そして『バルガデスの鍵』の先にある世界は、半球のドーム型天井の洞窟で直径500メートルほどの円形フィールドの地面。その中心に『暴竜バルガデス』が座っている状態から始まるクエストで、ある程度接近すると、タイムカウンターが視界の右端に現れ、戦闘開始になる。  全員が揃っているのを確認した俺は、無言でゆっくりと歩き出す。 「リツ、いつもの掛け声はしないのか?」  俺の横に並んだワルドさんが、大きなハンマーを右肩に抱えて、左肩をほぐすように回している。 「野良パーティーの時は、やらないじゃないですか。」  ワルドさんと二人でボス系のモンスターを倒す時は、俺自身の気合を入れる意味で、いつも叫んでいる言葉がある。  もう、7年も前の事になる。俺がこのゲームで最初に出会った知り合いに聞かれた問い。 「この世界は君にとって、どういう物なんだ?」  その時のパーティーリーダーだった人からの質問に、俺はなぜか真剣に返すべきだと感じた。 「そうですね。この世界が人が作り出した物で、現実には無い世界だとしても、俺にとっては生き甲斐そのもので、自分を知ることが出来る世界だと思っています。」 「自分を知ることが出来る?」 「はい。現実の世界は、なにかしらの制限を自分に掛けるじゃないですか。」 「制限?」 「はい。例えばプロスポーツ選手は、本番でも怪我をしない事を考えていますよね。素人の趣味なら尚更、次の日の生活の事がありますよね。」
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