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「あぁ! なるほど、自分の限界か。」
「はい。それと、この世界の冒険者って最初は皆同じレベル1からのスタートで平等なところも良いですよね。」
「そうか。平等という考え方は無かったな。他にはなにかあるかい?」
「他にですか? そうですね…ゲームの世界として考えるなら、さっきの事も踏まえて、全力で遊べる最高の世界。ですね。」
俺の答えを聞いたあの人は、「全力を出せる世界か…そうだね。」と納得し、それからボス討伐前などの掛け声になった。
そしてあの人達と別れた今も、俺は口癖のようにその言葉を使っていた。
「まあ、そうなんだが、今回は気合入れないとキツそうだろ? お前のそのセリフを聞くと気合が入るからな。」
ワルドさんが、後ろに視線を移せと目配せをしたので、俺は、ボス討伐前に緊張感が漏れている4人の方を見る。
まあ、最悪…俺とワルドさんの二人だけになる可能性もある訳だしな…
そうなったら、報酬アイテムを渡せなくなるし。
「そうですね。俺も気合入れないとですね。」
俺は、足を止めて後ろを振り向く。
その俺に合わせて、ワルドさんと後ろの4人もその場で止まる。
「私が全力で突っ込みます。みなさんはバルガデスの最初の攻撃を見切ってから、参加してください。」
「了解しました。」と、ジンロックさんの言葉に残りの3人も無言で頷く。
俺が自身専用エンチャンを発動させたのを合図に、各自が持つ自身専用エンチャントを掛けていく。そして支援系スキル持ちのローザストが最後に、支援系スキルを全て付与するエンチャント魔法『フルエンチャント』を各個人にかけていく。
武器の持ち替えなど、全員の準備が終わるのを確認した俺は振り返り、『暴竜バルガデス』向けて拳を突き出した。
「準備は良いですか?」
「おう!」「「「はい。」」」
「それじゃあ、暴竜バルガデス! 全力で遊ぼうかぁ!」
気合の言葉を吐いた俺は全力で走り出す。
俺の存在に気付いた暴竜バルガデスが雄叫びを上げて戦闘態勢になると、タイムカウンターが『29分59秒』と表示された。
巨大な体格とは思えない素早い動きを見せる『暴竜バルガデス』
体の硬さを使った頭突きからの噛み付きと、尻尾攻撃が主体で、太い足からの蹴りとタックルもあって、瞬間的な見切りとカウンターの攻撃が必要になる。
盾を使っての防御でダメージを防ぐ事は出来るけど、その度に仰け反りや反動で飛ばされたりするので、攻撃に転じる回数が少なくなるからだ。
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