アリスティアラ

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 セージをメインにしているオレンジさんが私の疑問をローズマリーさんに訊ねていた。 「腕をこう上げて、バインド発動準備! 目標後ろの足!って言ってから、撃てぇ! って言いながら腕を振り下ろしたので、私は動きを合わせるようにバインドを使ったんです。そしたら、成功したんですよ!」 「そんなことでか?!」    オレンジさんが驚くのは無理もないです。私も目の前で見ていなければ、信じる事は出来ない話だから。  バルガデスの突進モーションは、後衛が位置取りする場所から確認するのは至難な事。  それこそ、前衛の位置で何度も見て覚えた者だけが知ることが出来る領域の話。  そのパラディンはセージもやっていたのでしょう。出なければバインドの発動にかかる時間を考慮してタイミングを教えなければならないのですから。 「そのパラディンは、その時は前衛の位置に居たのですよね?」  私は、労いの言葉をかけることを忘れて、会話に参加していた。 「あ! アリスティアラ様。はい、その通りです。」 「バルガデスの動きを知り尽くしたアサシンが良くする方法ですが、バインドとチェーンは発動タイミングが違いますから、その人は、セージ系もやっている人なのでしょう。『腕を上げてタイミングを合わせる』なんて事は、魔法使い系じゃないと理解出来ないですからね。」 「ほんとうですよ。事前にそんな話はしてなくて、いきなり言われたんです。でも意図が判って、やってみたら成功したんですよ。…なんで事前に教えてくれなかったのでしょうか?」  ローズマリーさんの疑問は簡単な事でした。 「それは、博打的な判断だったのでしょう。例えタイミングを合わせたところで成功する確率は低いですからね。」  私の答えと、その難しさを知っているギルドメンバー達が一様に納得の顔を見せて頷いています。 「そうなんですね。…全力で遊ぼう…ほんと、その通りの人でした。」  思い出し笑いをしているローズマリーさんの、呟いた言葉に私は耳を疑った。 「え?! ローズマリーさん、今なんて言いました?」 「え? パラディンさんのセリフですか? 全力で遊ぼう…です?」 「そうそれ! その言葉ってどんな時に言ったセリフですか?」 「えっとですね。ボスと戦う前です。拳をこう突き出して、全力で遊ぼうかぁってバルガデスに叫んでいました。」 「その人は今どこにいるか判りますか!」 「えっ? あっ! ちょっ!」 「アリス様、落ち着いて下さい。それでは、お話されるのが無理だと思います。」
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