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嬉しそうに笑顔を向けるローズマリーさんを今は置いといて、私は『始まりの村』に向かう事を決めた。
始まりの村『ファース』に着いた私達は、周囲にプレイヤーらしき人が居ないか探す。
「それにしても、新規プレイヤーがこの村に居たとして、何故あの人はこの村に? 」
「もし、彼だとしたら意味の無い事ではないと、いうことでしょう。」
フォレストさんは彼を高く買っている。
誠実で、真面目で、面倒見が良くて、気配りも出来る。ってなれば当然だけど、真面目過ぎるし、気配りも度が過ぎて、いつまでも他人行儀だし、ほんと、ムカつく!
「アリス様。気を静めて下さい。苛立ちが出ていますよ。」
アイリスの指摘で、私は深呼吸をして心を落ち着かせる。
「パラディンの顔を知っているのはお二人ですので、二手に分かれて村の周囲を探索してみましょう。初心者服を見かけたら、連絡を。」
男性組みと女性組みに分かれ、女性組みは村の南門の外を探すことにした。時間的にあと30分も無いので、フィールドから戻ってくるなら西か南門の2択になる。
そして私達は転移ゲートから南門まで歩き、NPCしか見当たらなかったので、門を越えて村の外に出た。
「アリス様、丘の向こうに人影があります。」
村を守るように囲う塀の上に飛び乗ったアイリスが、『スナイプ』を使って探索したようで、私とローズマリーさんは確認出来なかった。
「初心者装備の女性ですね。どうしますか?」
アイリスさんの問いは、接触するのか、しないのか。ってことでしょう。
「そうですね。人見知りだとしても、女性からの声には逃げないと思います。ですが、わざわざフィールドを歩いて来て、話しかけられるとなれば、私でも警戒します。ここは、アイリスさんが監視してパラディンとの待ち合わせまで隠れているのが妥当ですね。」
「判りました。では、私は物陰から監視を続けます。」
「私はフォレストさんと合流して、転移ゲート付近の建物の影で待機します。ローズマリーさん行きましょう。」
私はフォレストさんに電話をかけて、転移ゲートが見える建物に身を潜めた。
17時までの残り時間は、あと15分ほど。
もし、あの初心者服が、パラディンの言っていた相手なら、パラディンも転移ゲートから現れるかもしれない。
「あっ! パラディンさんだ。ジン、間違いないよね?」
「ああ、あの人で間違いない。リツさんだ。」
転移ゲート前に現れていた黒い服を見たローズマリーさんとジンさんが、いち早く結果を私に告げる。
さて、どうやって確認するか。正直、ノープランだった。
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