夢見る世界

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 総勢12名にタンクが最低でも2名か…   まあ、マナー違反狩りをしているやつらだから、想定はしていたけど…  時間も過ぎていくし、やるかな。 「ああ、邪魔はしないから、そっちも俺達の邪魔をしないでくれよ。」  俺はそう言い放ち、ミサさんに視線を移す。 「ミサさん、女神像の前に立てばイベントが進むからそれをやってください。5分祈れば花が現れて、取れば完了です。で、そのまま私が良いと言うまでこの神殿から出ないで下さい。それと、私の事は絶対に気にしないで下さい。絶対に、ここから出ないで下さいね。」  不安な顔で頷くミサさんに俺は笑みを返し、神殿の外へと出るとイベントリを素早く開く。  そして俺の前方に魔方陣が浮かび上がり、朱色の馬が現れる。  俺はそれに飛び乗り、馬を走らせた。 「な?! ナイトだと! FA(エフエー)を取るつもりかぁー!」  俺の馬を見たさっきの男が後方で叫んでいた。  この『リツ』というキャラは一番最初に作ったキャラで、重装備の前衛壁役の『テンプルナイト』系  もちろん、レベル100のカンストキャラだ。  狩り的に引退キャラになっていたから、いつもは採取効果が付いた『探検家の服』を着ている。  だから、あの男は油断していた。  このゲームシステムの一つに、『ファーストアタック(FA)を得たパーティーのみが戦闘することができる。』となっているので、俺が奥に居る『白竜パティア』を最初に殴れば、誰も邪魔する事は出来なくなる。  物理的に邪魔をすることは出来るけど、PK(プレイヤーキル)が出来ない以上、俺が逃げ回れば戦闘に巻き込まれるだけになる。  俺は走る馬上でシステムメニューを開き、セット服2『探検家』からセット服1『セイヴィア』に変更する。  全身黒い鎧のフルアーマー装備。上半身を隠すほどの大きな盾を左腕に、右手には幅広な刀身のバスターソードを握っている。  盾も剣も鎧と同じシリーズなので当然真っ黒だ。  これを使う事を少しだけ躊躇った。  しかしあれを独りで相手をするのには、最強の装備で挑まなければならない。  目の前まで迫った『白竜パティア』に俺は馬から飛び出してバスターソードを一振り打ち込む。 「戻れ! アカツキ。」  任意で設定出来る『セリフコマンド』で馬を戻した俺は、咆哮を上げて俺を睨む『白竜パティア』に剣を向けて身構える。  このまま、5分間耐えれば良いだけ。だけどミサさんに楽しく遊んで欲しい気持ちと、あのマナー違反のパーティーに『白竜パティア』をこの後取られるのが物凄く嫌な気分になっていた俺は、こいつを倒す事を既に決めていた。
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