蠱惑『西瓜』

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「ふうっ、ふうっ」  母は怯えるように警官を見ています。そう言えば前回この若い警官が巡廻で来た時も母はこのように怯えていました。それを風邪と勘違いしたのでしょう。 「膝が痛いので立ち上がると辛いんですよ」  私は怯えていることを隠しました。 「ありがとうございます。お母さん、お大事にして下さい。それでは失礼します」  若い警官は母を見て安心したのでした。恐らく交番の古株に母の確認をするように言われていたのでしょう。 「年配の方はお元気ですか?」  私は交番の古株のことを訊ねてみました。 「はい、永田さんはお元気です」 「そうそう永田さん、永田さんにお伝えください、母は元気ですよと」  若い警官は私に悟られたのでたじろいでいます。  梅雨明けが近いと天気予報の夫人が笑顔で言いました。蔓から黄色い花が咲きました。 「お母さん、ほら花が咲いたよ」 「ああそうだね、ありがたいね」  母は笑っています。 「もしかしたら実がなるかもしれないよ」  私は蔓の伸びる方の庭をきれいにしました。母の座る縁側の方に伸びていくように仕向けました。縁側の母まで2メートルです。水をやりスーパーで肥料を買って与えました。花は実になりました。 「お母さん、これ西瓜だよたぶん」 「そうだねえ」 「だってほら縞模様が薄っすらと見えるよ」 「ありがたいね」 「大きく育てて二人で食べれたらいいね」  母は笑って頷いています。  
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