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翌日も雨が続きました。職人も来ませんでした。
「母さん、郵便局に行ってくるよ」
現金が切れたので下ろしに行きました。帰って来ると魚を煮付けるいい匂いがしてきました。誰か来ているのでしょうか。
「ただいま」
部屋に上がると真っ白な割烹着を着た夫人がネギを切っていました。もしかして姉の娘でしょうか、三年前に姉と寄ってくれたことがあります。
「沙耶ちゃんかな?」
後ろ姿に声を掛けると頷いたように見えました。
「通りまで美味そうな匂いがするよ、ありがとうね」
私は礼を言って縁側に行きました。すると西瓜と母の座布団だけで母の姿がありませんでした。便所かもしれないとノックしましたがやはりいませんでした。母は朝から夕方までこの縁側で座布団に座り庭を見つめるているのが習慣です。私は台所に戻りました。
「沙耶ちゃん、お袋を見なかった?」
さっきまでまな板を叩いていた姪の姿も消えています。割烹着が脱ぎ捨てらています。胸に良子と刺繍がしてありました。母の割烹着です。姪は母から借りて調理をしていたのでしょうか。私はまた縁側に戻りました。母が笑って西瓜を撫ぜています。
「母さん、どこに行っていたの。さっきまで姪の沙耶ちゃんが来てくれてたのを覚えているかい。飯台にカレイの煮つけがあるよ。沙耶ちゃんが作ってくれたんだよ。沙耶ちゃん父さんの好物を覚えてくれていたんだね」
「ああ、父さんが帰って来たんだよ」
母の言葉に驚きました。私の言葉をはっきりと理解した上での返答でした。
「母さん、私の言葉が聞こえるの?」
「ああ、ありがたいね」
私の錯覚だったのでしょうか。それでも母の顔に赤みが差しているのを感じました。尻からはみ出した脹脛はやけに色っぽく感じました。私が浴衣の開けから見ていると母がニコと笑いました。
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