家庭教師はめんどくさい

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電車を乗り換えた時、少し酔いが抜けてきたのか、顔を上げ、周りを見渡した。 「ここどこですか?」 「海人くんの家へ向かう電車の中。酔って判断力が失われてたから家知ってる俺が送らされてるところ」 「え、ごめんなさい」 「いいよ。まあ、よくあることだし」 「ありがとうございます。やっぱり臨也さんは優しいですね」 「優しくなんてないよ」 興味ない相手にはとことん冷たいしね。 「そんな事ないです。だって、俺、そういうところに惚れましたから」 「惚れ?!」 いや、人間としてだよな、うん、俺の頭がそっちに変換しちゃうだけだよな。 「そうですよ。臨也さんのことが好きです。それは臨也さんもですよね。高校生だから、男同士だからって気づかないと思ったんですか?」 「……」 「ある時からなんか視線が熱いな、って気づいて、その時はまだ優しくて頼りになるお兄さんくらいに思ってて、だから、どうしようかな、って。それでしばらくは気づかないふりをしてたんです。でも、すごくはモテなくても普通にモテそうな臨也さんに好かれてるっていうのがなんか嬉しいな、と思い始めて、なんか、俺だけのものになってくれたらな、って気持ちに移行しました。でも、そこで家庭教師をやめたいって言い出して、泣き落とせないかな、って思ったけど、決心は固くて。だから、だったら違うのは3年間だから、うまくいけば再会できるな、って、同じ大学の同じ学科を目指して、合格して、同じサークルに入って、新しいつながりを作りました。で、今です」 気づいてなかったのは俺のほうだったのか。いや、でも、それでも、3歳下の高校生に、っていうのは犯罪臭がするし、気づいていても同じ選択をしたかもしれない。
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