家庭教師はめんどくさい

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「そんなになるまで飲んだのもわざと?」 これもわざとなら計算高すぎて感心する。 「それは違います。お酒飲み慣れてないのと、余計なこと考えてたせいです」 「安心したわ」 「どうやったら違和感ないように話しにいけるかな、って。結果オーライですけど。で、どうですか?もう俺のことなんて好きじゃないですか?2年経って余計にごつくもなってるし……」 正直、その不安げな喋り方と酒で潤んだ瞳で既にグッときている自分がいる。この2年間、彼女がいなかったわけでもないし、封じてきたから大丈夫だと思っていたのに、全然そんなことはなかった。でも、3歳差はやっぱり騙してるような、複雑な気持ちになる。こんな真面目で純粋な子を俺みたいな気持ち悪い男の毒牙にかけていいものなのだろうか。 「いや、好きじゃないことはない……」 「ですよね。だって、視線がそう言ってますから。じゃあ、付き合ってくれますか?もし、別れたいと思った時はすんなり別れますから」 「付き合います」 つい言ってしまった。俺もちょっと酔ってるのかもしれない。 「やった!じゃあ、ここで降ります。お疲れ様です。また連絡しますね」 「あ、俺も方向違うから降りるわ」 「そうだったんですね。なんか、送ってもらってすみません」 「そんな遠くはないし、いいよ。またね」 「臨也さん」 分かれて反対方向の電車のホームへ向かおうとすると名前を呼ばれたので振り向く。 直後、唇に濡れた感触があった。 「おやすみなさい」 海人くんは改札の方へ抜けていった。 他の人もいる駅でできるタイプだったのか、とちょっとびっくりしながら感心してしまった。 翌朝、目を覚ますとあれって現実ですか?ってLINEが来ていたので、付き合ってる、って話なら本当だよ、と送っておいた。
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