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閑話休題(1)
「俺はさぁ、寝ることが大好きなんだよ。夢が見られるじゃん。ファンタジーだろうがサスペンスだろうが、夢ってアホみたいな内容で、何でもできちゃうわけ」
「でも僕は怖い夢は見たくないと思うなぁ」
「そう? ホラーだって本当に死にやしないんだから、俺は楽しんじゃうよ」
「海斗は強いんだね」
「ユキくんの方が強いよ。性格も根性もあるし、ち○こだってデカい」
俺が冗談めかして言うと、ユキくんはクスクスと笑った。午前2時、古ぼけたアパートの一室、ダブルベッドの中、そして恋人のユキくん。全てが揃っている素敵な世界だ。俺のための、完璧な城。
ガバリとユキくんに抱きついて俺は甘えた声を出した。ユキくんはマイナスイオンを出しているから、抱きつくと幸せホルモンがいっぱい出るのだ。
「明日の仕事行きたくないよぉ」
「ほらほら駄々をこねない。頑張って行ってきて。海斗はヒーローなんだから、しっかり市民を守ってくださいな!」
ユキくんは俺の背中をぽんぽんと優しく叩いてくれた。癒しだ。完全なる癒し。甘いボイスに優しい対応。彼以上に母性に満ち溢れた彼氏に出会ったことは、今まで一度もない。
俺は感涙を流しながら、ユキくんの胸に抱きついた。おっぱいに埋もれて塩水と鼻水をこすりつける。ユキくんは怒らない。ユキくんは文句も言わない。ユキくんは俺を肯定してくれる素敵な彼氏。雪のように透き通った髪と、甘いマスクが魅力的な、最高の彼氏。
「ユキくん結婚して」
俺の求婚に、ユキくんは苦笑した。
「ごめんね。僕じゃ君につり合わないよ」
ユキくんは最高の恋人だ。──でも俺とは結婚してくれない。
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