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刺してしまった後で
光が差した。
陽だまりの丘で、空を翳し、見上げた。
誰かに秘密を握られていたが、それを揺りのネタにされ、ストーカーまでされ、殺害予告迄届き、夜はチャイムが鳴る。そんな、寒気のする眠れない夜を幾夜と無く、繰り返し、私の精神は極度に追い詰められて居た。
その秘密は、この国家の存亡が懸かっている、需要案件。
円|恭一郎に寄る罪業、著名な女性に対して行われた一連の犯罪史に残る、無惨に切り裂きその死を、無為にした、彼という卑劣なる羅漢に対して、隠蔽した罪だ。
国が滅びる
何を馬鹿げた事を
誰も相手にしなかった。
こうやって今自分のしている事さえも無駄だと、金にモノを言わせ、自分の手柄さえ横取りする卑劣なるオトコ。
されど、成れの果てなのか、円は、この世界を救いたいと嘘をついた。
そんな戯言今時誰も言わない。せいぜい、NHK受信料問題でネタにしている奴等の方がよっぽど、マトモに見える。
円は時代錯誤の偏屈な理屈を捏ねくり回し、有りもしない幻想を、我々に提示していた。国家の危機に我々は瀕している。今こそ、手を携え様ではないか、と。
なんなんだ?コイツ。
テレビを付けると連日彼の面が画面に浮かんで、辟易していた。
チャンネルを変えても、まだ彼がいた。流石に、苦情をNHKに掛けた。
オイ、変なやつ流行らせるナ!!!
愚痴とも、揶揄とも採れる様な、蕪村な態度で、NHKの局員にダイヤルを掛けた。
しかし、向こうはお決まりの礼節とやらで、煙に負かし、私の心を踏み躙る。
すみません、すみません
謝罪の繰り返し。
電話越しに、その低姿勢まで伝わる様な、律儀とマナーを徹底的に仕込まれて、新入社員は、それぞれ役に廻される。
金を踏み躙られた国民どもの怒りは、マトモなルールすら、守らない、貧乏人達に、怒りが向くようにできている。
あの?NHK受信料払って頂けませんか?
アパートの前で、中に入れて貰えませんか?とおずおず尋ねると、いえ、払いませんと手を塞がれ、追い出される。
怖いな、と信田麻美は、それ以上は深入りしないで、次の営業に周る。
こんな風にして、受信料未払い問題が深刻化していく中、いや、そもそもそんな問題などより、円がテレビに出て、NHKが連日的に報道しているのは、一体全体どう言う事なのか?その真偽がよく理解できない。
ただ、一つだけ分かっているのは、今の自分が酷く停滞して居ると言う事だ。
どうでもいい、退屈な時間が流れ、無価値になってしまった。
マンネリ化した仕事に、疲弊するだけの豚足な身体。
野暮ったい
辟易する。
こんな、惨めな一生が、永遠に続くのだと想う。
不貞腐れた笑みで、一つの提案をした。
そうか、メディアに出よう
そう、素直に想った。余程、何かに不満だったンダロウ、そんな事をヤリタイと彼は急に思い立ち、NHKの採用面接を受け、落ちたが、次が有ると、地元の某テレビ局の、古参朝日川TVに
どんな手段を使ったのか、良く入れたな!と近親者は、お前みたいなヤツがな、と舌を巻いた。
それは彼にはどうでもよく、実際TV局と言うモノは、凄く下っ端の雑務に追われる事は知っていた。自分の企画した立案が採用されるなんて、そんな全国のお茶の間に流れる狙いがあるのなら、東京のフジテレビの春の採用面接を受けた方がどんなに、幸先がいいか、学生なら皆んな知っている。その受験戦争を勝ち抜いた奴だけが、本を出せるだけの無能の|蝿になれるのだ。フフ、皮肉混じりの彼の能弁は、口が滑るぐらいに、戦線恐々としていた。
この自分が、今の自分になった、根本的な要因は自分という有益が、豚社長に寄って、才能が棄却されて、無益になる事だった。
怒り、憎悪、果てしない複雑に入り乱れた、怨恨。その全てが、金欠から派生していた。
カネ
この世の全ては金。
彼が永い人生の中、漸く知った真実は、カネが全て。
そんな一番受け入れたくなかった、夢も希望もない、この腐食した国家に対する憎しみが着火剤となり、当て擦られて居た。
飛んだとばっちりだ。飛び火が火の粉がコッチ迄やって来た!!!
NHK局員が、相手して居た漢は、犯罪者だったのか…!!!
その漢、円恭一郎は、下っ端からこの国家の根底をグラグラ揺らがし、自分の不幸の根源迄、突き詰めようと想った。
今日も受話器を握り、眼には、何も精細に欠いた瞳で、声を掛ける。
モシモシ?
国家が見殺しにした、女性への侮辱残虐行為を、僅かばかりのカネで、僅かばかりの懲役で、釈放したその甘い、国家司法に宣戦布告する。
"私の怒りは、この世界の怒りだ"
「心しておけ」
円恭一郎は、政治家批判言論の自由が損なわれる事は、日本国家に取って、国民の声を封殺する事の懸念を、案じていた。
だが、それすらも分かった上で、私はこの国家に対する、歪んだ腐蝕を払拭しようとしている。
何故、たかが、赤の他人のために…
あるインフルエンサーが、口走った。
いえいえ、赤の他人では御座いません。
それは私のオンナナンデス
?戸惑う彼の目が見ていて愉快だった。
僕が愛した、それが原因でこの世を去った、叶美咲に瓜二つの事件だ、だから標的にする事にした。
この歪んだ精神が蔓延したこの国を破壊する。
そうして、円恭一郎に寄る犯行声明文が、一斉にSNSに拡散した。
この事件は、元来この国家に昔から、蔓延って居た、怨念から、担を発していた、昔からの因縁、女性に対する非道な現実が報われないまま、繰り返している事から、甘んじている国家から、胆を発しているのかも知れない。
人民がその事を疑いだし、連日、SNS界隈は、政治批判が、錯綜していた。
一連の流れを見つつ、彼が願って居たのは、自分の妻、美咲の無念を晴らす事だけだ。
それは、私自身の為にしていた。
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