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18話 トリステスの女性貴族
「国王陛下、いいえ、伯父上。このままでは、ワタクシがトリステスの貴族と結婚した意味が無くなってしまいますわ」
そう言ってその貴族然とした女性は国王ジャージルに向かって毅然とした態度で文句を言い始めた。
ここは先程までスハイド公爵がいた謁見室。
人払いをし、侍従も官史も居らず国王ジャージルと、彼を『伯父』と呼ぶ女性。そしてその娘であろう若い女性の三人が密談をしていた。
「待て待て、そなたの言い分は分かったが、何故トリステスの皇帝とハイドランジアの王女が結婚する話になったのだ?!」
国王はまるで寝耳に水の情報に驚きを隠せない。
「ですから、あの時ハイドランジアの王女がパーティーに居たのです。グエン陛下はあの王女の腰に手をやったまま片時も離れませんでしたのよ」
「そうですわ。このままだとワタクシが皇妃になるという目的が達成できなくなってしまいます。ですから王女を拉致させてそのままこのジャガルに送り届けさせる予定だったのに・・・」
忌々しげな口調でそう言うと、続けて思い出すような表情をする貴族女性。
「山小屋には王女どころか奴隷の魔術師も間諜すら居なかったのですわ。最近になってあの例の小娘が女性騎士になってしまい私共貴族を皇宮から追い出す始末ですのよ。その時に不穏な言葉を言いますの」
二人の女性が眉を顰め思い出すような仕草をする。
「どのようにだ?」
「グエン陛下にお似合いなのは『あの美しいお方だけ』だとか・・・」
「あのパーティー以降はずっとそのような事を言ってますわね」
二人の言葉を聞いて渋顔になる国王ジャージル。
「伯父様、もう一度魔法奴隷をお貸し下さいませ」
「今度こそあの王女をこの国に送り届けさせますわ」
二人の剣幕に若干引き気味になるジャージル。
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