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22話 馬上の人
時は少しだけ巻き戻り、シャガル王の執務室から退出後、そのまま城門から馬に乗って王都中心部にあるホテルへと向かうスハイド公爵。
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城門から出る直前に侍従に明日もう1度登城する旨を伝えていた時この国の高位貴族に呼び止められ、そっと耳打ちをされた。
「このままではこの国は立ち行かなくなります。陛下は我々の意見には耳を傾けてくれません。スハイド公。貴方様も御心をお決めください」
緊張をはらんだ小さな声とは裏腹に彼は笑顔で『それでは失礼します』と、挨拶を大きな声ですると、そのまま王宮内へと去っていった。
公爵はその言葉には何も答えず、軽く会釈だけをしてその場を立ち去った。
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「私に期待されてもねえ・・・」
そもそも、前国王の父つまり顔も知らない彼の祖父に当たる当時の国王が今の国の体制、要するに貴金属の輸出で外貨を稼ぐ事を主軸にすると方針を変えたのだ。
それまでの国内の主要農産物や牧畜業といったものを切り捨てて。
そのせいで平民男性はほぼ鉱山に従事させられたと聞いている。
女性だけで第一次産業を続ける事は難しい。どんなに頑張っても体力だけは、男性に劣っているからだ。
結果、農村や牧畜業は廃れ、国内の生産高はどんどん衰えていった。
だが貴族達はその事には目を向けずその政策に賛同し昔以上に贅沢を繰り返すのが当たり前になった――
元平民の母親はその事を幼い彼に懇々と言い聞かした。
「いいかい? 親は食い扶持を自分で稼ぎ、自分の養い子は大切に育てる。その子が大きくなったら、また次へと同じように延々と続く。そうでないと家族はやって行けなくなる。国だって同じだ。あれは稼いでるんじゃなくて、土地や平民から搾取してるだけだ。大きくなるまで生き残れたら、メイソン、アンタは絶対に間違っちゃ駄目だよ」
そう教えてくれた母は結局、他の側妃に毒を盛られこの世を去った――
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