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11話【最終話】ずっと貴方と
「グエン様? 本当に良かったのですか? 皆様きっと困ってらっしゃいますわよ?」
船のデッキから手を振り終わりクスクス笑ってシンシアは隣に並ぶ、浅黒い肌の美丈夫を見上げる。
――私が心からお慕いするグエン様は、やっぱりやんちゃだわ・・・
「いいんだよ~。どーせこの船は1年後には帝国に戻って来るんだぞ? 丁度婚姻式の頃だろうが」
「・・・あら、よく考えたらそうですわね」
小首を傾げて目をパチパチとさせるシンシア王女。
「グエン様はそこまで計画していらっしゃったのですか?」
「ああん? まさか。それは今思いついた」
ニヤッと笑う皇帝陛下。
「皇城にいたら邪魔ばっかり入って、ぜーんぜんッイチャイチャ出来ねーから、違う所に行きたかったんだ。この船は途中で降りることも出来るし、俺は世界中に家があるからな。部下だって世界中に散らばってる。だから国に帰ろうと思えばすぐに帰れるだろ?」
「アラ、そういえばそうでしたわね」
何かを思い出すような仕草をするシンシア王女。
「えッ? シンディ? 忘れてたのか?」
「ええ、今言われて思い出しましたわ」
「・・・じゃあ、さっきの」
「さっきの?」
「下男でも関係無いっての・・・」
「はい?」
「本気で言ってたのか?」
「ええ? 勿論ですけど? 当たり前ですわ」
そう言って笑顔になるシンシア王女をそっと包み込む様に抱きしめるグエン。
「ありがとう」
「? あ、グエン様、イルカでしょう? 本でしか見たことが無かったのですけど。本物はあんな風に跳ねるんですね!」
キラキラした目で海上を跳ねているイルカの群れを見ているシンシア王女。
――どこまでもマイペースである・・・
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