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「きゃああああああああああああああ!!」
翌朝。魔王城の朝は女の悲鳴から始まった。
敵襲かと飛び起きる者もいれば、のんびりと伸びをして身支度を始める者、二度寝をする者など反応は様々。そのころ厨房で朝の下拵えをしていた紫は、味見で口に含めたスープを噴き出していた。
庭から聞こえた悲鳴に、みんな何があったのかと各々の窓から身を乗り出し、庭の方を確認する。
見えたのは、人一人分ぐらいの穴、となぜかその穴の周りに転がる野菜たち、とスコップを持った魔王だった。
なんだこれは、どんな状況だ。
訳が分からず紫は顔を顰めた。朝早く起きすぎて幻でも見ているのだろうか。
しかしどれだけ目をこすっても映る光景が消えることはない。残念ながら現実だ。
「あーっはっはっは! 成功だ!」
スコップを肩に担ぎながら穴に向かって高笑いを決め込んでいる魔王。昨日の生米のせいで頭がおかしくなってしまったか。
主の頭を心配していると穴から手が伸び、何かが這い出てきた。
「な、なにするの!?」
困惑の表情を浮かべた狼だ。
たしか狼には、朝の野菜調達のために畑に向かうよう紫が頼んでいたはずだ。なのに、なぜこんなことになっているのか。
綺麗に整えられていたドレスワンピースも泥にまみれ、ふわふわ髪には草が絡まり、目を瞠るほどの白い肌も所々黒く汚れていた。ボロボロの状態の狼に、仲間たちは何があったのかと呆然とする。
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