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そのころ魔王は相変わらず高笑いを続け、地面に座り込んでいる狼を満足げに見下ろしていた。
「昨日の食事で、ガキみたいなことした仕返しだ! バーカ!」
あっはっはとまた高笑いを始める魔王に、狼は眉を顰めた。しかし、厨房の窓から聞いていた紫はすぐに魔王が何の話をしているのか思い至った。
昨日の魔王の晩御飯を生米にした仕返しだ。
ため息をつきたくなる。我が主ながら、なんという子どもじみたことを。
狼も気づいたのか一瞬目を開いた後、徐々に目を吊り上げていった。
「ガキはどっちよ!? 落とし穴なんか作って! そんなことしてる暇があったらご飯食べてよ!」
魔王はふんっと鼻を鳴らし、狼からそっぽ向く。
「肉料理なら食べてやらんこともない!」
「もう! えらそうに!」
「ばーか。俺は魔王だぜ? 実質えらいんだよ!」
怒鳴りながら魔王を睨みつける狼に、魔王は面白がるようにニヤニヤと笑いながら、スコップを剣のように構え格好つける。全く詫びる様子のない魔王の態度に、狼はわなわなと身体を震わせ、地面に散らばった野菜の一つを鷲掴みにした。
「こんな子どもみたいなことしてる魔王がいてたまるもんか! このッ! このッ!」
「いってぇ! やめろバカ! 俺まで汚れるだろうが!」
癇癪を起した子どものように狼は、所かまわず粉々になった野菜を魔王に投げつける。魔王はその猛攻撃を避けようとするが、避けきれずに何度か攻撃を受けその場から逃げ出した。怒り狂った狼がそんな魔王を逃がすわけもなく、すぐさま立ち上がり、彼の後姿を追いかけていく。対して魔王は野菜にあたり汚れていく服を最初は気にしていたものの、徐々に楽しそうに笑い声をあげながら、追いかけてくる狼から逃げていった。
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