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豹変した隣人の疑惑
隣に親子が引っ越してきてから数日、私はあることで悩んでいた。
それは母親の怒鳴り声と子供の泣き声だった。
引っ越しの挨拶に来てくれた感じのいい彼女からは想像もつかないくらい怒り狂った彼女の怒鳴り声、それに応える子供の泣き声。ひどいときはその声が1時間くらい続いていた。
壁一枚挟んだ隣の部屋から聞こえてくる怒鳴り声や泣き声は、言葉の内容まではっきり聞こえてくる。
「ふざけんじゃねぇよ、てめぇ!」
「ごめんなさい!もう怒らないでよ!」
「怒らせてるのはてめぇだろ!同じこと何回も言わすんじゃねぇよ!」
「今度はちゃんとやるから、もう怒らないでよ!」
こんな感じのやりとりが日常茶飯事で聞こえてくる。
(これってもしかして・・・でも母子家庭だしいろいろ大変なんだろうな。)
そう自分に言い聞かせた。というよりは余計な詮索をしてめんどくさいことに巻き込まれるのは避けたいというのが本音だった。
そんなことが続いたある日、仕事から帰ってくると隣の部屋に見知らぬ若い男性が入っていくのを見かけた。その男性の背後に例の老婆がピタッとくっついて一緒に部屋に入っていった。
部屋に帰ると隣の部屋から親子と男の声が聞こえる。珍しく母親が笑ってる声も聞こえる。
(今日は機嫌良さそう。)
しかし、しばらくするとまた子供の泣き声が聞こえ出した。そしていつもの母親の怒鳴り声に加え、男の怒鳴り声も聞こえる。恐らく2人で子供に怒鳴っている。言葉がほとんど恫喝に近い。子供の泣き声はさらに激しさを増した。
(さすがにやばいよね・・・。どうしよう。でも・・・。)
そんなことを考えていると、窓の外に赤色灯の灯りが見えた。隣のインターホンが鳴る音がかすかに聞こえる。玄関のドアに耳を当てると
「〇〇署の者です。近隣で子供の泣き声が聞こえると通報がありまして・・・」
母親と男の声も聞こえる。
「別に手はあげてませんよ。ちょっと大きい声で叱っただけです。ただの躾ですから。通報した人が大げさなんですよ。」
そんなやりとりも聞こえた。
しばらくして警察は帰ったようだった。
しかし翌日以降も怒鳴り声は聞こえ、男も頻繁に隣の部屋に来ているようだった。
そして老婆の姿も相変わらず隣の部屋の周りでよく見かける。
老婆の表情はいつも悲しげだった。
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