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老婆の正体
あの一件の後も状況は変わらず私は隣人の件でだいぶ参ってしまっていた。おまけに、今朝仕事に行くときにゴミ出しに行く例の母親と遭遇した。挨拶をすると、私の顔を見ず挨拶も無視して立ち去っていった。
溜息しかでない。
その日の夜、仕事から帰るとあの老婆が隣の部屋の玄関の前に立っていた。
私は咄嗟に老婆に声をかけた。
「こんばんは。最近よくこの部屋の辺りにいますよね?どうされたんですか?」
老婆はびっくりした顔で私の顔を見てこう言った。
「私が見えるの?」
「見えますよ。ずっとおばあちゃんのこと気になってたんです。」
「そう。不思議だね。私が見える人に出会えるなんて。」
「何か気になることがあれば、お話し聞きますよ。」
老婆は少し黙って考えた後、話始めた。
「この部屋に私の孫が住んでいるんだけど・・」
「あ、もし良かったら私の部屋に来て話ませんか?」
老婆は頷いた。老婆と一緒に自分の部屋へ帰り、2人分のお茶を用意する。
「お茶まで用意してもらって。ありがとうございます。」
「とんでもないです。お茶しかなくてすみません。さっきお隣にお孫さんが住んでるって言ってましたよね?あの小さな男の子ですか?」
「いいえ。母親のほう。」
「どうしてお孫さんのお部屋に来ているんですか?」
「このままだと、あの子はとんでもない間違いを犯してしまうかもしれないから。心配でつい来てしまっているんです。」
「私の部屋によく聞こえてくる声と何か関係ありますか?」
老婆は黙って頷いた。
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