老婆が語る隣人の真実

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老婆が語る隣人の真実

「あの子は小さいころから気が強くて頼り下手で、なんでも自分で抱え込む性格で。でも根は優しくて私の誕生日には必ず贈り物をくれてね。あの子が結婚をしてひ孫が生まれてからは私に何度もひ孫を連れて会いに来てくれて、私も安心していたんだけど。私がいなくなって少ししてからあの子の前の旦那がギャンブルで借金を抱えたり他に女を作ったりで、結局離婚して母子家庭になってね。それでもあの子は親にも頼らず一人で子供を育てていくと決めたんだけど。でも一人ではどうしてもうまくいかいことってあるじゃない?その苛立ちを子供にぶつけるようになったのよ。前のアパートも怒鳴り声や泣き声に苦情が頻繁に来て居れなくなってここに引っ越してきたの。このまま放っておいたらいつ取り返しのつかないことになってもおかしくないのよ。私がいくら話してもあの子には聞こえない。」 「そういうことだったんですね。あの・・・よく部屋に来ている男性は彼女の元ご主人ですか?」 「いいえ。彼は新しい交際相手。あの男と一緒にいるのも本当は良くないのよ。いずれ籍を入れる約束をしているみたいだけど、彼は裏で悪いことをしたり定職にもつかずあの子の部屋に転がり込んだり、ひ孫に手を挙げることもあるの。でも前の旦那に裏切られたあの子にとって、たとえ危ういところがあっても自分を頼ってくれたり時には優しいあの男のことが好きで好きでしょうがないみたい。母親ではなく女になってしまっているのね。籍を入れてもあの子が苦労するだけなんだけど。とにかく誰かにすがりたいのかもしれない・・でも、なによりひ孫が可哀想でね。」 「あの男の子の泣き声は、隣で聞いてる私も心が苦しくなります。ただ、彼女にしかわからない苦しみもあるかもしれないですね。」 「人間って生きてればいろいろな失敗をするでしょ。すこし考えればわかるようなこともその時の欲とか焦りが理性を失わせて、取り返しのつかないことをしてしまうことがある。そうなって初めて気が付くのよ。でもね・・・そうなってからでは遅いのよ。悔やんでも悔やんでも、死んでも悔やみ続けるの。私がこっちの世界にきてから、そんな方も沢山見たの。でももしかしたら、その過ちを犯して、自分で気づくことがあの子にとっては必要な経験なのかもしれないと思ってしまうこともあるの。」 「過ちを犯す前に気付ければそれに越したことはないです。霊と会話ができる私の部屋の隣に引っ越してきたお孫さん、これって何か意味があると思うんです。」 「あなたの力を貸してくれない?あの子に私の言葉を伝えてもらえないかしら?」 「そうですね・・・。」 今朝の彼女のあの態度は完全に私を警戒している。ましてや亡くなったおばあちゃんからの伝言と言って彼女は私の話を信じるだろうか。こんな話をしたら彼女に逆恨みされるかもしれない。でも放っておけない、男の子の命がかかっている。
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