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母さん、また韓国に行っちゃった。
しかも決まったのは、たった一週間前。
いつも「疲れた、歳だ、腰が痛い」を連発しているくせに、
いざ旅行が決まったら、
凄まじい勢いで家事を片付け、
新しい服を買いに行き、
大量のおかずをストックし始めた。
「まずはカレー。初日はカレーを食べて。痛みやすいから。それで、たっくんが帰ってきたら、カレーを暖めて、この粉をかけてあげて。たっくんは辛い方が好きだから」
と、小瓶を渡された。
「…何これ」
「唐辛子」
じゃなくて、今から渡されても・・・。
その後もテンションハイな母さんの口から、次々に注意事項が繰り出された。
みんな、弟に関することばかりで、親父はどうすんだって話。
しかも弟、中1だよ?
自分でやらせらばいいじゃん。
それなのに、
「たっくんが、たっくんに、たっくんも、たっくんは…ねぇ聞いてんの?」
ああ、うるさい。
頼むから早く行ってくれと思ったね。
そういえば、同級生のミミ。
これも最近うるさくて仕方ない。
「智樹が通っている空手の道場あるでしょ?
友達がその近所に住んでるんだけどぉ、いつも帰りに同じ女と、二人乗りして帰ってるって言うの!
しかも女の方が、頬っぺたをね、こうやってね、こうやったりね、してるって!それって浮気だと思わない!?」
そもそも智樹は、彼女が一ヶ月おきに違っている様な男だ。
ミミもそうだけど…。
智樹は、とにかく性格がズルイ。
女子の誕生日とか記念日とか、ちゃんと覚えてる。
「茜ちゃん、誕生日だよねー?いつもキレイな字のノート貸してくれるから、おごってあげる」
さらりと言う。
誰だって悪い気はしない。
しかしミミだってさ、
智樹の前の彼女から奪い取って付き合い始めたんだよね。
なのに、
「なんで、彼女がいるって分かってるのに、そういうことするのかなぁ!?」
と怒ってる。
私らも最初はフォローしてたんだけど、
毎日毎日、似たような話を聞きかされて、うんざりしてきた。
それで、
「間違いなく浮気(むしろ二股)」
とはっきり言ってやったら、
ミミは急にしおらしくなっちゃって、
「でも・・・智樹はぁ…一緒に帰ってるだけって言うの」
あー。
マジ、めんどくせー。
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