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「十和……」
雪那は歩いている足を止めると、十和の方へ視線を向けた。
「——俺達二人が力を合わせれば、きっと俺達の知る歴史より
ほんの少しでも良い未来を作れるんじゃないかと思う。
俺はこの時代で、大切な主君と家族を得られた。
そして——十和に出会えた。
俺は三成様も家族も、そして十和のことも守りたい。
だから……十和と一緒に歴史を刻んでいきたい」
「……うん。
雪那と一緒に前へ進みたい」
二人は手を繋ぎ合わせると、
三成や里子達が待つ近江へと再び歩き始めた。
ここから先の未来は、決して平坦なものにはなりえないだろう。
不要な血が流れることや、望まない結末を迎えることもあるかもしれない。
しかし十和と雪那は覚悟を決め、茨の道を進むことを選んだ。
自分達の帰る場所を、自分達の願う未来を奪われないために。
この世界で新しく紡がれて行く歴史を知る者は、誰も居ない——
完
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