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「マダムー!本当に行っちゃうんですか?!」
ロザリーの、グズリ声で、ナタリーは、はっとした。護身用の小銃にナイフを、まだ、出してない。が、ロザリーがいる以上、徐に、旅行鞄へ移すことはできない。
「あら、店番は?ロザリー、しっかりしてちょうだいな!留守をまかせられないわ」
「あー!だったら行かないでくださいー!」
「もう、ぐずぐず言わないで、とにかく、仕事に戻りなさい」
ナタリーは、ロザリーを部屋から追い出すと、荷物の最終チェックに入った。
鏡台に置いてある、上げ底仕様の宝石箱から、小銃を取り出し、文机の上に置く、ぺーバーナイフに見せかけたナイフを取ると、旅行鞄の底に仕舞いこんだ。
次に、カイゼル髭から受け取ったばかりの汽車のチケットに目を通し、出発時間を確かめると、手提げバックの中に入れた。
余り時間はなかった。乗り遅れてしまうと、全ての段取りが、狂ってしまう。何時もの事とはいえ、どうして、もっと早く、依頼してこないのかと、腹立たしさと戦いながら、荷物を持って部屋を出る。
あとは、辻馬車が拾えるか、だが、どうせ、カイゼル髭が、馬車が通りかかる様にしているはずだ。
そして、ナタリーは、ロザリーの叫びを振り切り、図ったように、通りかかった辻馬車を拾うと、駅へと、向かった。
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