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彼女が私の手を握ってきた。
「貴女も大変な目にあっていたんですものね、
その事も忘れて、感情的になってしまって
本当にごめんなさい」
「私の事は、もういいんです、
私の事より缶助君が無事に乗り越えられる
ようにその事だけ祈っていましょう」
缶助の姉も、コクリと頷いて椅子に座った。
時計を見ると、午前4時になっていた。
窓から見える外の景色も、朝日に照らされ
新しい一日の色に染まっていく。
缶助の指が一瞬動いた。
そこにいた全員がそれを見逃さなかった。
缶助の父親が
急いでナースを呼びに行く。
医師とナースが急ぎ足で缶助の元へときた。
医師が缶助の様子を隈なくみている。
そして、部屋を出て来て私達に笑顔で言った。
「もう大丈夫でしょう、峠は越えたようです、
しかし、まだここからはでられませんが
安心してください、後は私達に任せて皆さんは
休んでください、無理をするとご家族の方まで
病院の厄介になりかねませんからね」
医師がそう言った途端、私の前身の
力が抜けた。その後の事は覚えていない。
*************
目が覚めるとそこは病室のベッドだった。
点滴を打たれ数時間寝ていたようで、
母が私の横でベッドにもたれかかって
寝ていた。
「母さん、母さん」
寝ている所、可哀想だったが、
皆が気になったので起こしたのだった。
眠たそうに頭を持ち上げる母。
「母さん、皆さんは?」
「父さんが、家に連れて行ったわ」
「そう、よかった」
「後で警察が来るそうよ、
色々ききたいんですって、
あなたも、そろそろ家に帰ってらっしゃい
探偵ごっこなんかやめて」
「母さん酷いわ、ごっこ遊びじゃないわよ
れっきとした仕事なんだから」
「あらそう、それにしては稼ぎが全くなしで
お金ばかり使っているのはどこの
どちらさんですかね」
私は何も言い返せなかった。
そして、それから1時間ほど点滴が
終わったのを、見計らうかのように刑事
達が2人病室に入ってきた。
「夏凛さん、ご無沙汰です。
今回は、大変な目に遭いましたね。
それにしても、夏凛さんのところの
探偵助手さん、関谷君でしたっけ?
彼は、刑事の僕が言うのも何ですが
よく自力で犯人を見つけ出せましたね
数少ない手がかりから、写真の嘘を見抜き
犯人の家まで見つけ、そこから潜伏場所まで
見つけ出しあなたを助けた、
1人で乗り込んだのは、
唯一の失敗でしたけどね」
「木戸さん、その辺の事
詳しく聞かせてくれませんか?」
「ええ、構いませんけど、
先ずは、こちらの方から伺いたい事が
ありますから、先に聞かせて下さい。
最初にあなたが、行った工事現場、
どうして、あそこに行ったんですか?」
「はい、前に父からあの場所で
高層マンション工事が、始まると
聞いていましたそれに・・・」
「それに、なんですか?」
「少し離れた所にホテル街があったのを
思い出して・・・」
「ホテル街とあの工事現場と
どう言う関係が?」
「・・・そのことに関しては調べが
付いているんじゃないんですか?」
「そうですけど、やはりお聞きしなければ
なりませんので」
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