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6、さよなら、角之進
缶助が入院して、4日目の事だった。
未だに缶助は目を覚さない。
私と缶助のお母さんとで、缶助の
面倒を見ていた。父親と姉は仕事の都合で
新潟に戻っていった。
お母さんは、自分が缶助の面倒を見るから
と言っていたが、私にも看病を
させて欲しいとお願いして一緒に缶助の
身の回りの事をやっていた。
私が缶助の顔をタオルで拭いていた時
病室の扉が開いた。
「夏凛」
と聞き覚えのある声。
「かっちゃん」だった。
「事務所も、携帯も通じないから
君の実家に電話をしてここにいる
と聞いて飛んできた。
大変な事件に巻き込まれたんだってな、
缶助君の様態は?」
「缶助なら、今はもう大丈夫、一時は
危なかったんだけど
何とか持ち直してくれた、私を助ける為に
こんな、大怪我してしまったんだ、
でもまだ、目が覚めないの・・・
かっちゃんこそ、どうしてたの
電話しても全然出なかったじゃない」
「僕の方も色々あってね、実は・・・
ここじゃ何だから、屋上にでも行こうか」
「わかった、先に屋上に行ってて
缶助のお母さんに言って来るから」
急いで洗濯室にいる缶助のお母さんに
知り合いが来て話があると言っているので
少しだけ時間をもらっていいか
聞いてみる。
「どうぞ、どうぞゆっくりしていらっしゃい
缶助のことは私が見ているから
大丈夫よ」
了解をもらって屋上に向かった。
かっちゃんは、金網越しに遠くを見ていた。
「お待たせ、それで?話ってなに?」
「僕が、北海道に行っていたのは
ある事件の犯人を追っていた、
アメリカのニューヨークタイムズにいる
友人に頼まれて、国際指名手配されている
犯人をね、その犯人は北海道に
潜伏していたんだ。
運良く、その犯人は逮捕出来た。
その、逮捕劇の一部始終を
タイムズに載せたいと言っている、
それで急遽アメリカに行くことに
なってしまった。
それで、急なんだが夏凛も僕と
一緒にアメリカに行って欲しいと
思って今日ここにきた。
返事はすぐにでなくていい、
ニューヨークタイムズの事件記者に
スカウトされたんだ、うだつの上がらない
フリーのライターじゃなくなる。
堂々と君に結婚を申し込める
君の両親にも堂々と言える
君の事を下さいとね。
あとは、夏凛の気持ちだけだ。
僕とアメリカに行って欲しい、
君と結婚したい、頼む夏凛!
僕の願いを聞いてくれ」
「そんな事、急に言われても私・・・」
「返事は今すぐでなくていい、
一緒にアメリカに行けなくても
その時は後から来てくれればいい
僕と一緒にアメリカで暮らそう」
「僕は、1ヶ月後にアメリカに発つ
できればそれまでに答えが欲しいが
僕と結婚する、その答えだけでもいい
君の準備ができた時に迎えに来る
今は、缶助君の事が気になるだろう
だから、無理は言えない
だけど僕の願いを聞いて欲しい」
「急な話で、今はなんて答えていいか
わからない 、だからもう少し待ってて」
「わかった、君のいい返事を待っている
忙しい所悪かったね、僕もこれから
また行くところがあるんだ、
だから、今日はこれで失礼するから
いい返事を待ってるぜ」
そう言って「かっちゃん」は
忙しそうに病院を出て行った。
屋上から「かっちゃん」の車を
眺めていた。
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