吞兵衛、夏凛の酔いどれ探偵、捕り物控  弍 夏凛誘拐される

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  7、 呑辺探偵事務所、廃業? 朝1番の飛行機で、かっちゃんはアメリカに 飛び立っていった。 見送りはしなかった。 病院の窓から空に向かって「元気でね」と 言っただけ。 缶助が、入院してから私も缶助の 母親と一緒に病院に寝泊まりしていた。 だから、1ヶ月ほど事務所に帰って いなかった。 少し心配になったので今日事務所に 戻ってみることにした。 缶助とお母さんに事務所の様子を 見てくると言って、午前中に病院を出た。 タクシーを拾って事務所に戻る。 そして、ビルの前まで来たとき、 「あれっ?」 と、違和感を感じた。 入り口に「工事中立ち入り禁止」 の立て札が立っていた。 「えっ!何で?何の工事?」 不安に駆り立てられながら、 入り口から、中に入る。 すると、見慣れた顔の男性がいた、 うちの会社の建築部門の責任者だった。 「青木さん!なにこれどうなってるの」 「あれ?お嬢様、どうしてここへ?」 「聞いてるのはこっち! なんで?これどうなってるの?」 探偵事務所が取り壊されている。 缶助の部屋も取り壊されていた、私の ワンルームの部屋も・・・ 「どう言うことなの!説明して!」 「あれ?聞いていないんですか? 社長からの指示でこのビルを解体するんです マンションをここに建てると言って いましたが、お嬢様はご存知ないんですか?」 「知らないわよ、何も聞いてないし! それに、私の荷物や助手の部屋の荷物は どうしたのよ!それに車は!」 「はい、すべてお嬢様のご実家に 届けてありますが」 「ありますがじゃないでしょ! 何で私に何も言わないでそんなこと するのよ!」 「そう言われましても、社長命令でして 僕たちとしては、言う通りにしただけでして はい・・・」 私はすぐに、実家に戻った。 家の中に突進して、父さんの部屋に行く。 扉を開けるとそこには お爺さま、お2人、お婆さま、お2人が 父さん、母さんを取り囲んでいた。 私が部屋に入ると お爺さま、お婆さまが 「夏凛!!無事で良かった、 どこも、怪我はないかい?大丈夫かい?」 と私を取り囲んで、抱きつかれた。 無事でよかった、無事でよかった、と・・・ 「今、お前の父さん母さんに文句を 言っていたところったんだ、 夏凛が誘拐されていた事を 私たちに、黙っていた、 そのことで今、『何で黙っていたんだ!』 と、問い詰めていた所だ」 「私も父さんに言いたい事があって きました。 どうしてあのビルを取り壊すの!! 私に何も言わないで、何で そんなひどい事するんですか!?」 「チョット、待ってくれ! 順番に話すから、 夏凛が誘拐された事を黙っていたのは お父さん、お母さん方に申し訳無かった、 心配かけたく無かったんだ」
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