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「なんの電話でしたか?」
「何だか、調査依頼らしいんだけど
駅前の喫茶店に来てくれだってさ、
私ひとりで・・・依頼内容はその時
詳しく話すと言っていた、
缶助、後で駅前まで車で
乗せていってくれ、それで終わったら
電話するから、迎えに来てくれるかな」
「わかりました、でも変ですね
どうして事務所ではダメなんでしょうか?」
「まあ、色々人目を気にする人も
いるからな」
「そうですか・・・夏凛さん、念のため
これを持って行って下さい」
超小型GPS付録音器を渡した。
いつもだったら「こんなもの要らね〜よ」
と言いそうだが、今回は僕の言う事を
素直に聞いてくれた。
何となくおかしいと思ったのかもしれない。
夏凛さんは、それをバッグに入れた。
この、録音器にはGPSが仕込んである
俗に言う探偵グッズだ。
例えば相手にわからないように
バッグの下とか車内とかテーブルとか
にくっ付けたりして使い
後で回収して、会話を証拠品として使う。
回収する為にGPSが付いているのだ。
待ち合わせ時間がきた。
駅前の喫茶店までは車で10分と
かからない。
NSXで夏凛さんを喫茶店「シャルル」まで
送る。
話がどれくらいかかるか
わからないから、事務所で
待機していてくれと言われた。
僕は、夏凛さんを下ろしてすぐに
事務所に戻った。掃除の途中だったので
残りの片付けをしていたが、
うっかり、時間を忘れて掃除に夢中に
なってしまった。
時計を見ると、3:50分だった。
まだ、1時間経っていない。
しかし、もう1時間になると言っても
おかしくない。
大抵最初の打ち合わせは30分ほどで
終わる。
少し込み入ってる話なのかな
などと、思いながらトイレ掃除をする。
掃除が終わり時計を見ると
4:20分、いくら何でもかかりすぎだ。
心配になり急いで、事務所に鍵をかけ車で
駅前の喫茶店「シャルル」に行く。
ガラス張りの喫茶店の中を確認して、
GPSを見る。するとまだ中にいることに
なっていた。
だが、らしき人は、見当たらない
急いで中に入って確かめるが、
店の中に客は誰もいなかった。
カウンター内のマスターと思われる人に聞いてみる、
「1時間ほど前に薄紫の
ワンピースを着た女性が入って
きませんでしたか?男性の方と待ち合わせ
していたと思うんですが・・・」
「はい、いらっしゃいました」
「どの席に座りましたか?」
「あそこの席ですよ」
マスターが指を挿した。
「すみません、ちょっと確認させて頂きます」
「どうぞ」
すぐにその席に行きテーブルの
裏を確認する。
するとやはり録音機が張り付いていた。
録音器とテーブルの間に一枚の写真も
挟まっていた。
男性と女性が腕を組みながらどこかの
街中を歩いている写真、道の両サイドには
ラブホテルの看板が立ち並んでいる。
「何で夏凛さんは、こんなところに
貼り付けて行ったんだろう」
不思議に思ったが、それを回収して、
マスターに礼を言って喫茶店を後にした。
僕の中の不安が増大していく。
早く、事務所に戻り録音されているであろう会話を
聞かなければ、夏凛さんは何処に行ったか、
今何をしているのか、この写真が何を意味しているのか、
手掛かりが記録されていればいいのだが・・・
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