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事務所に戻ってきた。
すぐに、夏凛さんの携帯に電話をする。
しかし、繋がらない。電源切れているか
電波が届かないところにいるか、
どちらかだ。
次に矢板さんの携帯に電話をしてみるが
こちらも、携帯が同じ事を言っている。
でも、おかしいな?
あの矢板さんが、二股などするだろうか?
金沢での、あの夜あんなに酔っ払いながら
僕に必死に夏凛さんのことを話していた。
あの時の矢板さんは、何を言っていたか、
よくわからなかったが
夏凛さんを、思う気持ちに嘘は無いと思う。
そんな人が、夏凛さんを騙すだろうか?
矢板さんの夏凛さんを思う気持ちは
本物だと、信じたい。
すると・・・この写真は?
どう見ても矢板さんにしか見えない。
この女性は本当にあの依頼者の
奥さんなのだろうか?
夏凛さんにしたら、いきなりこんな
写真を見せられたら、動揺して
正常な判断が出来なくなってしまう、
それでなくても、金沢から戻ってきて
ずっとあの調子だったのだから・・・
少しの疑惑でも、疑う事なく
それを信じ込んでしまうだろう。
僕は、もう一度夏凛さんの携帯に
電話をかけてみた、
しかし、同じだった。
矢板さんの携帯にも電話をしてみたが
やはり、出ない。
ここは、まず矢板さんの潔白を証明した上で
夏凛さんを探し出し、安心させて
あげなければ・・・
それには、この女性が本当に依頼者の
奥さんか、それを確かめる。
〇〇商事の社長と言っていたから
そこから確かめていけばおのずと
わかる事。
僕はすぐに〇〇商事について調べ始めた。
ネットを駆使して調べていく。
社長の名前は、すぐにわかった、
依頼者と同じだった。
〇〇商事は、僕でも名前くらいは
聞いたことがあるので、調べていけば
社長の自宅も直ぐにわかる。
そして、近所の人たちに聞けば奥さんかどうか
わかるはず。
すぐに、パソコンで写真をスキャンして
写っている女性だけを拡大。
一枚の写真にした。
そしてハローページで社長と同姓同名の
家に片っ端から電話をかけて
確かめた。
すると、数件目にヒット!!
社長の自宅住所がわかった。
時刻は21時10分前、夏凛さんの事も
心配だが今は、この写真の女性の
事を、調べるのみ。
夏凛さんを安心させてあげなければ。
僕は矢板さんが二股かけているなどと
100%思っていない!
あの時の矢板さんの言葉は本物だと
思っているから。
その晩、僕は事務所の電話機の前で
夜を明かした。
うとうとして、目が覚めた時は
朝の7時ちょい過ぎ。
急いで事務所を出て、NSXに乗り
昨夜調べた〇〇商事社長さん宅に向かう。
朝の通勤ラッシュに時間を取られながら
9時過ぎに目的地、社長宅についた。
近所のお宅から、人が出ていないか
確認しながらゆっくりと移動する。
社長さん宅は、さすがに豪邸だった。
車を走らせていくと、ゴミ置き場に
近所の奥さんらしき人が3人ほどいた。
急いで、車から降りて女性たちの
元にいく。
「おはようございます、
あの、私〇〇商事の社員なんですけど
田所社長のお宅は、こちらで
よろしいんですか?」
社員になりすまし、それとなく聞いた。
「そうですよ」
「あの、奥様をお迎えに来たのですが
この写真の方でしょうか」
女性達に写真を見せて確かめた。
写真を覗き込んだ女性が、
「いえ!違いますよ!写真間違えているんじゃ
無いですか?」
「えっ!本当ですか?僕は、奥様に
お会いしたことがないもので
この方だとばかり思っていました。
写真を間違えて渡されたようですね、
ちょっと、会社に電話してきますので
ありがとうございました、
すぐに出直してきます」
そうして、僕はその場を立ち去った。
やっぱり、この写真の女性は違う人だった。
すると、この依頼人の田所という男も
偽物かもしれない、だけど、
どうして夏凛さんに近づいてきたのか?
そこが、わからない。
ただ、矢板さん不倫の潔白は証明された。
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