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「お前は奏呪の長官だった。その責任の重さは重々承知しているのだろう」
「もちろんでございます」
まさかここで問い詰められるとは思っていなかった。奏翼は深々と頭を下げるしかない。それを見て、紫妃がくすりと笑う。それに、奏翼はちらっと目を向けた。この妃が今、笑ったのはどういう理由だろうか。
「あら、ごめんなさい。気を悪くしないでね。陛下ったら、あなたがいなくなったことをずっと気に掛けていたのよ。何が悪かったのだろうって」
「おいっ」
いきなりの紫妃の言葉に、さすがの龍統も慌てた。そして
「お前が裏切ったとは思っていなかったがな。一体何が原因か解らんから、気を揉んだものだぞ」
ふっと表情を緩めてそう言った。それに、奏翼は申し訳ありませんと頭を下げるしかない。
しかし、自分の抱える問題を皇帝に打ち明けるわけにはいかなかった。これはいずれ、自分で片付けなければならない問題だ。
それに龍統がなぜ奏呪というものを作ることが出来たのか。その秘密も、出来れば自分の中に仕舞っておきたい事柄だ。
「どうして去ったのだ?」
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