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その昔、大陸の中ほどにその国はあった。
唯一無二の皇帝が治める国、龍河国。
しかし、その国の名前が定まったのは、これから語られることがあった十年前のこと。
それまでは戦乱が続き、腕に覚えのある武将が天下統一を目指して入り乱れる、百家争鳴の世の中だった。
そんな中、現在の龍河国の皇帝・龍統がある秘策を放ち天下統一を決定づける。
それは戦場への呪術師の投入だった。
精鋭部隊である彼らは『奏呪』と呼ばれ、あらゆる術を駆使して、時には的の精神を破壊し、時には直接血祭りに上げ、殺戮の限りを尽くした。
そんな奏呪にあって、飛び抜けて殺しの呪術が得意な男がいた。
部隊での名を、奏翼という。
まだ十代のその男は、まるで感情が欠けているかのごとく、多くの人間を殺していった。
やがて戦乱が終わり、内部の揉め事も平らげられると、男は自らの活躍の場がなくなったこと、そして秘密を知りすぎていることを悟り、中央の都から忽然と姿を消したのだった。
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