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 内臓疾患での入院というものは、残念なものだ。入院していて丸木はつくづくそう思う。  生検の結果、やはり身体のあちこちが痛んでいるらしい。出された食事を残さず食べ、薬を飲んで大人しくして寝ているのがもっとも有効な治療法ということだった。  週に一回の頻度で、ベッドのシーツ交換がある。その間、病室から退出していなければならない。また、床の清掃やゴミ箱のなかの回収をしていく業者もやってくる。  いくら入院患者とはいえ、その程度のことは自分でもできる。ただし、患者がやってはいけないという決まりになっているらしい。松葉杖をついてリハビリ中の佐伯にとっては、それらの面倒を見てもらう大義名分はあろうが、丸木にとってはずいぶんと根拠の薄いような気がする。  自分が頼りない子供にでもなったようで、ひどく情けなかった。  その日の夕食は、プレーンのオムレツにブロッコリーとニンジンを茹でたもの、豆腐のみそ汁、サトイモの煮物、イチゴ二個。  自分の身の回りの世話もできない自分が、はたして飯を食ってもいいのだろうか。なぜか後ろめたさを感じる。  入院しなければならなくなったとき、丸木は「別にこのまま死んでもいいや」という気持ちがあった。いやなことがあれば病院を抜け出して、好き勝手に生きてやろうと思っていた。  今はなぜか何としても健康を取り戻さねばならぬという気になっている。せめて、飯を食うにふさわしい働きのできる人間に。
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