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「すごいですね。もっとお支払いしたいぐらいです。」
「お気持ちだけ、ありがとうございます。」
血糊を洗い流している間に、彼は真面目な好青年の姿に戻っていた。
「僕・・・変ですよね。異常なくらい女性にいじめられたいなんて。普段こんなことなんて絶対できないから・・・あの短時間で、よく考えられましたね。『異常ないじめ性癖の女性が、異常ないじめられ性癖を持つ猫の生まれ変わりに責められる話』・・・バッドエンドものの映画みたいでした。」
「ご満足いただければ幸いです。」
他人行儀な会話を重ね、必要な道具をバッグに詰める。もっとも、ただ痛めつけられることを望まれることも多い中で、今回のような依頼は斬新だった。
「では、お時間ですので。」
ホテルの前で、私は彼に背を向ける。
「あの・・・」
「はい?」
「・・・本当に、猫を突き落としてないん・・・です よね・・・?」
「・・・またのご利用をお待ちしています。」
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