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1 竹内安吾
世界は今日もくもり空です。ぴいぴいとすずめが啼いています。エサが目の前にあるのに食べられないと泣いています。人間がいるから怖くて電線からおりられないのです。
来週から夏休みです。最後の夏休みになります。
ウサギ小屋の掃除は楽しいです。六月ごろから暑くなり、ウサギたちのまるこい糞もこの時期になるとかなり臭ってきます。それを集めて新聞紙に包むのです。汚いとみんな騒ぎますが、ぼくはへっちゃらです。
怖がりのネムは今日もすみっこ暮らしです。
もうずっとずっとぼくと一緒にいるのに、掃除するぼくを震えながら見ています。でも、ネムはぼく以外の人間とは目を合わせることすらしません。ぼく以外の飼育委員が小屋に入るとすみっこで後ろを向いて震えるのです。
好奇心旺盛なチョコは黒ウサギです。
ぼくがほうきで掃くと、ほうきを追いかけます。ぴょこんぴょこんと追い回しますが、ぼくはあちこちにころがる糞を片付けなければなりません。ほうきの動きは速くなります。チョコはそれを一生懸命に追いかけるのです。ぼくはときどきチョコのためにほうきの動きを止めてあげます。チョコはいったんぼくを見て、首をすこしひねり、ぺこんとお礼をするように頭を垂れます。そのまま満足そうにほうきの穂に乗るのです。しばらく乗ったら飽きます。またぴょこんと跳び、他のウサギたちのお尻を追い回します。
餌は人参です。トレイに乗せるとチョコを先頭にみんなが寄ってきます。その場でむしゃむしゃ食べる子もいれば、抱えて取られないようにみんなに背を向けて食べる子もいます。ネムは寄って来ません。怖いのかもしれません。自分がみんなのところに行ってはいけないと思っているのかもしれません。
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